■第２回アリーナ開催
「アリーナに１６名の強者達が集まってくれた。日ごろの鍛錬の成果を思う存分発揮して大陸最高のルーンマスターを目指してくれ！今ここに第２回アリーナinエンブリアの開幕を宣言する！」
あいかわらずコロシアムの中央で叫ぶおっさんはおいておいて。
参加者の皆様のおかげでともかくもついに大陸各地から集まったルーンマスターが戦うアリーナの第２回大会がついに始ました。
さあ、大陸最高のルーンマスターの栄誉は誰の手に渡るのでしょうか？とくと御覧あれ！！！
『支殿の王狼』ユースフ・エドワルド
vs
『リキュウの愛弟子』アルテッツァ・フューレン
○試合
「どうした、どうした、見てるだけじゃ勝てないぜ！」
軽口と同時に放たれた刃がアルテッツァ（アルト）の体を刻んでいく。
しかしアルトは愛用の棍『漁火』を脇に構えたまま微動だにせず集中し、
「神導流槍舞術、震槌！」
一気に間合いを詰めてユースフの頭上に振り下ろす！
だが…ユースフはアルトが棍を振り切るより早く懐に飛び込むと拳を打ち込んだ。
「くっ、しくじった…」
衝撃ではじけ飛ぶアルト、しかしすぐに体勢を立て直してユースフに向かって駆け出す。
「ん？組み合うつもりか…」
アルトの動きを読んだユースフはアルトを翻弄し相手の間合いに入らない。
「…やるな。ならば！」
捕まらないユースフの動きに業を煮やしたかアルトは『漁火』を手放し印を結び強力な念を練り上げる。
「彷徨える魂よ……命の力よ……リキュウ直伝、奥義！退・魔・陣！！」
アルトから爆発的な力がまわりに広がる！
しかしアルトが印を組んだ時点で危険を察知したユースフは既に距離を取っていた…。
全力で念を搾り出した為の疲労か？無言で倒れ込むアルト。
「まあ悪くはない戦いだったが…相手が悪かったな。」
「…また手合わせしてくれよ。次は負けないぜ！」
アルトは力の入らない体を支えてくれたユースフに向かって笑いかけた。
○試合結果
１Ｒ：ユースフ・エドワルド 圧勝
２Ｒ：ユースフ・エドワルド 圧勝
ユースフ・エドワルド、第二回戦進出
『巫眼の放浪者』レクサス・ルクウェイン
ｖｓ
『マブダチ』ディアス・ヴィクトール
○試合
戦いの前座にレクサスは未踏地で交友を深めた異民族レッドアイの葦笛に似た楽器を取り出し吹き始める。
『紅眼の舞曲』と名づけられた曲が流れる間、アリーナにはその音を邪魔するものはなかった…。
「今、異民族の文化をこの場で演奏できたことを誇りに思う。」
レクサスが葦笛を地面に置くと同時にディアスが地を這うような変わったフォームで腕を振りぬく。
「なにを……、うっ！！！」
ディアスの投じた苦無はレクサスの目に映る事無くその足を餌食とした。
しかし倒れながらレクサスはすかさず上空に待機するＧパペット『ファーター』に精神をリンクしディアスの移動予測位置を計算していた。
「…アルファルファ！！Ｇｏ！！」
レクサスの叫びと共に高速で上空よりディアスに向けて目にも止まらぬスピードのＧノーマル『アルファルファ』が突撃する！
ドォォォン！！！闘場にもうもうと砂煙があがるなかディアスは吹っ飛ばされて宙を舞い………地面に落ちた。
レクサスが勝利を確信した一瞬の静寂の後…ディアスがゆっくりと起き上がる。
観客が驚愕に満ちた声をあげる中、ディアスはクイクイとペンギン帽の向きを直す。
「…今のゴーレムはイルカ型…だろう？………なぜ…ペンギン型にしなかったのだ！！！」
呟くが早いかディアスは一瞬でレクサスの前に現れて肩をつかむと上体をそらし頭突きの構えをとる。
ギラリと硬質の光をはなつペンギン帽のくちばしを模した鍔とディアスの両目の血走る様がレクサスが見た最後の景色だった…。
「いい試合だった。こういう風に皆、分かり合えればいいのにね。」
レクサスが額から血を流しながら差し出した手を握り返しながらディアスが言う。
「…全てはペンギン様のお導きだ…」
○試合結果
１Ｒ：ディアス・ヴィクトール 圧勝
２Ｒ：ディアス・ヴィクトール 圧勝
ディアス・ヴィクトール、第二回戦進出
『灼熱の王狼』ヒューガ・マクラッシュ
ｖｓ
『ア―サ―「ラヴラヴ四天王」』シギュン・シルフィード
○試合
「さぁ、かかってこい！」
愛刀『神威』を横一文字に構えて余裕の表情のシギュンの口上にヒューガは楽しそうに笑う。
「よしいくぜ！灼熱の王狼の剣、受けられるかどうか試してみろ！！！」
ヒューガは駆け寄ると大剣をシギュンへと横なぎに繰り出す。
（これはフェイント！？）
「見切った！ はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！」
シギュンはヒューガの太刀筋を読みきり一撃目を避けた瞬間に腕を取るために懐に飛び込む。
だがヒューガはシギュンの動きを見るや本命の２撃目のスピードを鍛え上げられた腕の力で急加速させた。
「遅ぇぜ！」
懐に入り際だった為に剣でなく柄の部分になったがシギュンを打ち、弾き飛ばすヒューガ。
しかしシギュンは体勢をすぐに立て直すとうまく離れたのを見てすかさず念じ自分の周りに次々と火炎球を生み出していく。
「面白れぇ！ 本気でいくぜ！！！」
ヒューガは火炎球にもひるまずにシギュンに向けて突進して全身を武器にした全力攻撃を連続で繰り出す。
ボン！ボン！とヒューガの一撃ごとに火炎球が爆裂するがあつく燃え上がったヒューガを焼くことは出来ない！！！
火炎球をすべて打ち払っても止まらない猛打にシギュンは防御に専念し続けるしかなかった…。
大剣を肩に担いだヒューガが苦痛で膝立ちになったシギュンに左手を差し出す。
「たまには本気で闘うのもいいだろ？またやろうぜ！」
ヒューガの左手に捕まり立ち上がったシギュンはヒューガに指を突きつける。
「つ……つぎは勝つから……。ぜ〜〜〜〜〜〜ったい勝つからね！ 覚悟しといてね！！」
○試合結果
１Ｒ：ヒューガ・マクラッシュ 圧勝
２Ｒ：ヒューガ・マクラッシュ 圧勝
ヒューガ・マクラッシュ、第二回戦進出
『覇王を目指す男”野心家”』シャールカーン
ｖｓ
『魔女の子』アレクディアス
○試合
試合開始と同時に獲物を見つけた獰猛な獣のごとき眼光を放つシャールカーン。
しかしアレクディアスは正面から眼光を受けてから口元に悪戯っぽい笑みを浮かべるとスッと気配を断つ。
「さすが不死者だな、この程度で怯みはしないか・・・」
ゆっくりと気配を探るシャールカーンの右腕にフッと現れたアレクディアスの短刀『デス・ストロ―ク』の漆黒の刃が吸い込まれる。
「…これでもう右手は使えないよね？」
おもちゃの人形の腕をもいで喜ぶ子供のように無邪気に笑うアレクディアス。
だがシャールカーンもまた不敵な笑みを浮かべるとすばやい動きで右腕に短刀を突き立てているアレクディアスの頭をつかむ。
「うりゃぁぁぁぁぁぁぁあ！！！」「うわ！」
シャールカーンはすさまじい怪力を発揮してアレクディアスの頭をつかんだ状態で体を振り回し地面にたたきつける！
だがゆっくりとシャールカーンが引き上げた顔はなぜかを血まみれの美女に変わっていた。
「何だと！？」
思わず手を放したシャールカーンから美女は身軽に距離を取ると瞬時にアレクディアスの姿となる。
「クスクス……さぁ出ておいで、僕の下僕たち……。あの人を黄泉の世界に引きずり込んであげるんだ！」
アレクディアスの哄笑と共に数多の死霊がシャールカーンの足元から這い出して纏わりついていく…。
「くそ、しつこいぞ！」
しばらくはシャールカーンの吠えるような叫びが聞こえていたが次第にその声は小さくなっていった…。
服の汚れを叩きながら死霊によって地面に押え込まれているシャールカーンを楽しそうに見下ろすアレクディアス。
「どう？オジさんにも不死者の素晴らしさが分かってくれたかな？クスクス……」
シャールカーンは動けないながらも激しく燃え上がる意志をもってアレクディアスを睨み返すのだった。
○試合結果
１Ｒ：アレクディアス 勝利
２Ｒ：シャールカーン 辛勝
３Ｒ：アレクディアス 辛勝
アレクディアス、第二回戦進出
『百合の』フィーナ・ナヴァール
ｖｓ
『風纏い』パアム・エルクリッド
○試合
「さあ、ボクがこんな魔法を使ったら…フィーナさんならどうするのカナ？」
パアムが作り出したその姿を竜巻で覆い尽くす大技にどう対応するのか？
観客はフィーナに目をむけるが、しかし…、
「きゃぁぁ、やぁぁん、パアムさん、風が強すぎですぅぅ！」
フィーナは風にひるがえるチェックのミニスカートの前と後ろをがんばって押さえるだけで動けそうにない！！！
「…さあ今度はフィーナさんの番だよ…」
まったくフィーナが動けないので風を止めたパアムは色々な攻撃を予想をしながら剣を構える。
「フィーナの番ですか？だったら一生懸命がんばりますです！」
フィーナはポケットからふさふさの毛玉のようなものを取り出して両手に装備すると胸の前に構えるが、しかし…、
「フレフレ、パアムさん！ 頑張れ、頑張れ、パアムさん！」
なんとフィーナは足を高く上げつつ両手のポンポンを元気よく振り回しながら何故か対戦相手のパアムの応援を始める！？
あまりのフィーナの破天荒な行動にすっかり勢いを奪われて呆然としているパアム。
その様子を見たフィーナは「えい！」とサキュバス２５体を呼び出し、手をあわせてお願いする。
「パアムさんが元気になるようにサービスしてあげて欲しいんです。」
ぞわりと走った悪寒にパアムが正気に戻った瞬間！その姿はサキュバスの群れに埋もれていってしまった…。
「ガンバってね。…ボク一応前回優勝してんだからフィーナさん自信持っていいよっ！………たぶん…」
顔中にキスマークをつけられ真っ赤っかな顔をしたパアムが乱れた服を直しながらフィーナにちょっと困ったような笑顔を見せる。
「最後はとっても激しかったです。見ていたあたしまで顔が赤くなってしまったです。きゃあきゃあ！」
パアムの言葉が聞こえているのかいないのかなんだか体を振りながら最後の様子を思い出して喜ぶフィーナだった…。
○試合結果
１Ｒ：パアム・エルクリッド 辛勝
２Ｒ：フィーナ・ナヴァール 辛勝
３Ｒ：フィーナ・ナヴァール 勝利
フィーナ・ナヴァール、第二回戦進出
『順風の王狼』ネストリア
ｖｓ
『赤き精霊使い』ジュンファン・グァン
○試合
グレートキャット、ハウンドウルフ、エレファントタートルを従えしジュンファンの赤き瞳と
煌く刀身をもつ刀剣『神室』を鞘から抜いたネストリアの紫の瞳がお互いを写した時に試合は開始した。
「さあ君は何を見せてくれるんだ？」
ネストリアのしなやかな体躯がジュンファンに向かい駆け出す。
「俺は…召喚師じゃん！」
でかい声で言い放ちジュンファンが精神集中に入る。
（…召喚するまで…待つか？…いや！）一瞬より強い敵との戦いを望んだのか？
浮かんだ考えをすぐに否定してネストリアはジュンファンを護る動物の間を高速に擦り抜けて『神室』を振る！
「ちっ」
腕を切られて精神集中が途切れたかジュンファンは下がりながら動物たちへ指示を出す。
すぐさまグレートキャットがネストリアの右腕を、ハウンドウルフが左足首を狙い飛び掛かるが、
ネストリアは食いつかれる寸前で右腕と左足首をうまく引き、二匹の動きを誘導して踊るように翻弄する。
そしてエレファントタートルを後ろでジュンファンがヒュランを召喚した時、
ネストリアは腰の袋より一掴みの灰を虚空へ向けて散らした。
「…なに！？どこ行ったん！？」
灰が晴れた時、ネストリアの姿はジュンファンの視界より消え去っていた…。
「あんた、やるじゃん！」
赤いシンプルな服にかかった灰を叩きながらでかい声でネストリアを誉めるジュンファン。
ネストリアはジュンファンのハウンドウルフの背中を撫でながら静かにその声を聞いていた…。
○試合結果
１Ｒ：ネストリア 辛勝
２Ｒ：ネストリア 圧勝
ネストリア、第二回戦進出
キヲン
ｖｓ
『雷獣艦隊提督(自称)』 ミラ・レボリューション
○試合
「まずは、小手調べ・・・」
月光石の淡い光がミラの小さな眼鏡にきらめくとミラは前かがみになりながら駆け出す。
ミラのまとう雷獣を模したコートがひるがえり、四足獣化したその姿をまさに雷獣さながらに見せる。
キヲンまであと数メートル…だがミラは横槍にすさまじいスピードで飛来した何かに打たれて吹き飛ぶ！
「そんなっ！一体なんです！？」
数メートル転がってからミラはすぐさま体勢を立て直して警戒しながらキヲンの周りを走りまわる。
だがキヲンはまったく動いている様子はなくミラのそんな動きにも反応を示さない…。
「ミラ様、ファイトォォォ！」
観客席からはミラが提督を勤める雷獣艦隊からついてきた応援団の黄色い声援がアリーナに響く。
だがミラは初撃からキヲンの底知れない実力を感じて攻めかねていた。
「…ですが…ここで簡単に引く訳にはいかないんです！！！」
ミラはキヲンの攻撃を冷静に見極めようとヒット＆ウェイで相手の出方を探ろうと決める。
同時にミラの周りに風が巻き始める…その風がミラを押し出しているのか？それとも早すぎるミラの動きが風を呼んでいるのか？
もはや一般人には捕らえることの出来ない速度に達したミラはキヲンの死角から飛び込む！
後少しでキヲンに届く…その距離までせまったミラはキヲンがいつのまにか自分の方を向いているのに気が付いた瞬間！
激しい衝撃に吹き飛ばされていた…。
「ミラ様、しっかり〜！！！」
応援団のナゾの黄色い生物の書かれた応援旗をバサバサを振り回しながらの声援を受けて、
ミラが呪式長銃『雷伯』を杖代わりに体を起こした時には勝利判定を受けたキヲンは場を立ち去っていた…。
○試合結果
１Ｒ：キヲン 圧勝
２Ｒ：キヲン 圧勝
キヲン、第二回戦進出
『『闇』 双刃の魔剣士』
アルム・ナート
ｖｓ
『必殺！仕置き人"風羽根"のルシーダ』
ルシーダ・ディラント
○試合
「じゃあ、いくわよ！」
ダッと駆け出しだルシーダに対してアルムは構えることなくジッと目を瞑っている。
そうアルムは目を閉じたままルシーダの気配を捕らえて近づいてくるのを待っていた。
「せぇのぉ！」
だが数メートルまでせまったルシーダが気合を放つとアルムはその気配を見失う！
「なに？」
アルムが驚き目を見開くとルシーダは目の前にはいない！？
だが戦いのカンというべきもので背後に何かを感じたアルムは双剣を抜きざまに背後へ向ける！
「あら？…失敗ね。次はもっと巧妙に…ブツブツ……」
手に持った紙をくしゃくしゃにしてほり投げるとバッと自分の体をアルムから隠すように赤いマントを翻す。
そしてマントが地面に落ちたときはルシーダの体は太陽を背に空を舞っていてアルム向けて数本の『風羽根』を投じる。
「当たらないな…、んっ？ …そうか……やるな。」
すぐに上空のルシーダを迎撃しようとしたアルムだが先ほどの『風羽根』に影を縫われて動く事が出来なかった！
「ちょっと待ってね。」
ルシーダは動けないアルムを見て色っぽくウィンクするとごそごそと腰のポーチを探りだす。
「フン…！ 甘く見られたものだな！！！」
アルムは裂迫の気合を込めて影縫いの呪縛を逃れるとその双刃の嵐をルシーダに向けて走らせた…。
「悔しいけど負けね。あなた見込みあるわね。仕置き人やってみない？」
アルムの実力を認めて正義の仕置き人に誘うことにしたルシーダ。
「…いや…遠慮しておこう…」
スチールビルダーの幻による今までのお仕置きの数々の説明を受けたアルムはめずらしく引きながら首を振った…。
○試合結果
１Ｒ：アルム・ナート 勝利
２Ｒ：ルシーダ・ディラント 圧勝
３Ｒ：アルム・ナート 圧勝
アルム・ナート、第二回戦進出
『支殿の王狼』 ユースフ・エドワルド
ｖｓ
『マブダチ』 ディアス・ヴィクトール
○試合
キィン！キィン！キィン！
地を這うように放たれたディアスの苦無がユースフの投げナイフに弾かれる音が試合を彩る。
「おいおい、その変な帽子は一体なんだい？」
余裕の表情のユースフがディアスのペンギン帽を見て言った言葉にディアスの目の奥がギラリと光る。
「…ペンギン様の…帽子が…変とはどう言う事だ！」
苦無を放つと同時にディアスはユースフに一気に接近する。
キィン！
ユースフは苦無を打ち落としてから距離を取ろうと動くが
ディアスの鉤状を模した指がユースフの体を引き裂く方が早い！！！
ガッ！ガッ！ガッ！ガッ！
「くっ…思ったよりやるな、あんた！」
連続でダメージを受けたユースフは愛剣『赤鰯』を抜きながら距離を取る。
だがはたから見てもイっちゃってる目の色をしたディアスが再びユースフに再び迫る。
ユースフは冷静に『赤鰯』でディアスを薙ぎ払おうと繰り出すが、
ディアスはフッと宙を舞うとユースフを超えてその背後から再び襲い掛かる。
並みの剣速では捕らえられないと悟ったユースフは腹の底からの気合と共に愛剣をディアス向けて鋭く真一文字に振った…。
頭をペンギン帽の金属の鍔ごしとは言え強打されて一瞬気を失ったディアスは普段の冷静沈着に戻っていた。
「貴公はきっと凄腕の傭兵では？ オレにとって良い腕試しになった…。」
ユースフは試合中とまったく違うディアスの様子に少なからず驚いていた…。
○試合結果
１Ｒ：ユースフ・エドワルド 圧勝
２Ｒ：ディアス・ヴィクトール 圧勝
３Ｒ：ユースフ・エドワルド 圧勝
ユースフ・エドワルド、第三回戦進出
『灼熱の王狼』 ヒューガ・マクラッシュ
ｖｓ
『魔女の子』 アレクディアス
○試合
「クスッ……君は強さを求めているみたいだけど…それなら優越種たる不死者になりなよ……」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら問い掛けるアレクディアスにヒューガは珍しく一瞬遠い目をした。
「俺の求める強さは他人にもらうようなもんじゃねぇぜ！」
熱く気迫のこもった一撃一撃を繰り出すヒューガとは対照的に捕らえどころのない影のように動くアレクディアス。
一見アレクディアスがヒューガを翻弄しているように見えるのだが…、
その実、ヒューガの的確な一撃一撃に隙を見出せないアレクディアスは苛立っていた。
「…だけど…これならどう？」
アレクディアスは男なら思わず目を惹かれてしまうような美少女に一瞬にしてその姿を変える。
「…ラ…ッ！」
誰かに似ていたのだろうか？予想以上に驚いたヒューガは手元を狂わせて大剣を地面に突き刺してしまう。
その様子にアレクディアスは美少女の姿のまま闇の刃を後ろ手に隠し持ちヒューガにスッと近づく…。
クスッ………。
勝利を確信したかすかに浮かべた微笑…。人をさげすんだようなその微笑を見た時、ヒューガの心に火が点いた！
「あいつは…そんな笑い方なんかしねぇぜぇぇぇ！！！」
ヒューガの攻撃はまさに荒狂う暴風のごとく一瞬にしてアレクディアスをぶっ飛ばしていた…。
「あるわけ……な…い……、こ…この…ぼ…くが……負けるなんて……。母様……た…すけ…て……」
すさまじいダメージを受けて動きの取れないアレクディアスがつぶやきつづける…。
「不死者にだって劣ってねぇだろ？ 俺が今まで求めてきた強さってやつはよ…」
ヒューガはアレクディアスを見ながら胸を張るのだった。
○試合結果
１Ｒ：ヒューガ・マクラッシュ 勝利
２Ｒ：ヒューガ・マクラッシュ 圧勝
ヒューガ・マクラッシュ、第三回戦進出
『百合の』 フィーナ・ナヴァール
ｖｓ
『順風の王狼』 ネストリア
○試合
試合開始と同時に愛刀『神室』を構えるネストリア。
「きゃあ、やめてくださいです！」
対するフィーナは目をうるうるさせ手をお願いポーズに組んでネストリアを見つめる…。
（…この少女が前回優勝者を破ったのか？）
戦いに向きそうもないカジュアル系の服を着て闘志がまったく感じられないフィーナにネストリアは困惑する。
「…君は私と戦う気が無いのか？」
ビシッと剣をフィーナに突きつけるネストリア、ほんのちょっとだけフィーナの手に切り傷が出来る。
「やーん、痛い、痛いです。」
血がほんのわずかジワっと滲んでくるのに合わせて目をうるうるさせて涙を流すフィーナ。
…しばらくして落ち着いたフィーナがミニスカートのポケットに手をやり何かを取り出そうとする。
ネストリアは何かを仕掛けてくると感じて先手を取るべく袋に仕込んでおいた小道具の灰をフィーナに向けて投げる。
灰がブワッとまき散りフィーナに向けて舞い飛ぶ。
「きゃいん、えへへ、ドジっちゃったです」
フィーナは実際には届かない灰におもわず驚き慌ててしりもちをついた。
そして起き上がろうとした時…フィーナの喉元にはネストリアの持つ『神室』の刃が静かにあてられていた。
「ネストリアさん、頑張ってくださいです、きゃあ、きゃあ」。
フィーナは試合後握手をしたときにミーハー少女のようにきゃあきゃあ喜ぶ。
「どうしたんですの、ネストリアさん？ あっあっ、そんな無視していかないでくださいよ。待ってくださいです。」
ネストリアはフィーナが騒いでいる間にさっさと立ち去ってしまうのだった…。
○試合結果
１Ｒ：ネストリア 圧勝
２Ｒ：ネストリア 圧勝
ネストリア、第三回戦進出
キヲン
ｖｓ
『『闇』 双刃の魔剣士』 アルム・ナート
○試合
ただ立っているだけのキヲンに対して、構える事無く自然体で間合いをつめていくアルム。
だがアルムの視線はキヲンの挙動を一瞬でも見逃さないように鋭く見つめている。
観客には二人の様子はただ近づいているといった感じだが見えない緊張感は激しく高まっていく…。
（ッ！！！）
キヲンの周囲で何かが動いた！そう気づいた瞬間アルムは自分の真横から飛来するモノに気がつく。
飛来する物体にアルムは即座に反応し動きを予測して捕まえようと手を伸ばした。
「見切った…！」
だがその物体はアルムの予想を越える変幻自在な動きで手をすり抜けると上着を切り裂いた！
「…フン…、やるな…。」
次々と意表をついた方向から切り裂こうと迫る物体を双刃でさばきながらアルムは機会をうかがう。
だが今まで微動だにしていないように見えていたキヲンが初めてアルムにその顔を向ける。
仕掛けてくると悟った瞬間、アルムは浮遊の魔力を開放して軽快な動きでキヲンの攻撃をさばこうと考える…。
しかしキヲンの体はアルムの想像の倍以上のスピードで闘場を駆け抜けてきた。
ドガッガッガッガッガァァァンッ！！！
二人の体が白兵戦の距離まで近づいた時、激しい打撃音と共に吹き飛んだのは…アルムの方だった…。
アルムを心配する声が観客席にいた人物からあがる中…。
「…私の負けだ…。兄さんとの約束だからな…これ以上の無理は出来ない…」
そう言いながらもまだ戦いたそうなアルムを無表情に見てからキヲンはその場を後にした…。
○試合結果
１Ｒ：キヲン 勝利
２Ｒ：キヲン 圧勝
キヲン、第三回戦進出
『支殿の王狼』 ユースフ・エドワルド
ｖｓ
『灼熱の王狼』 ヒューガ・マクラッシュ
○試合
己が信じた道…それぞれの王狼道を行く漢達は久しぶりに顔を会わせていた。
だが二人は言葉を交わす事無くゆっくりとお互いの武器を構え………一気に激突する！
ユースフの投げナイフをヒューガは体を少し動かす事で鎧に当てて弾くと接近して大剣を振りかぶる。
ヒューガの剣線に捕らわれる前にユースフはさらに距離を詰めて懐に入ると同時に左のひじ打ちを叩き込む。
そして一瞬の攻防の後、少し離れて対峙する二人。
「あいかわらず強ぇじゃねぇか…。戦いがいがあるってもんだぜ、ユースフ。」
「小手調べはこの辺にして全力を出してほしいもんだな、ヒューガ。」
ヒューガとユースフはお互いにこの戦いが楽しくてしょうがないと言った笑みを浮かべている。
「これで一気に決めてやるぜ！！！」
ヒューガはその全身の力を爆発させて肢体すべてを牙と化す！！！
ユースフは距離を取ろうとしたが一瞬で追いつかれてしまいその牙の嵐に巻き込まれる。
あっという間にユースフの体はヒューガの猛攻の前にキズだらけになっていった。
「オラァァァァァァァ！！！」 ドドォォォン！！！
ヒューガが放つ渾身の最後の一撃を腕をクロスさせてうけたユースフが十数メートル吹き飛び盛大に砂埃をあげる！
だがその攻撃で全ての力を出し切ったヒューガは荒い息を吐きながらその場に立ち尽くしていた。
そして…数瞬の後、力尽きたヒューガめがけて砂埃の中から愛刀を構えたボロボロのユースフが飛び出すのだった…。
「俺の本気を耐えるとは、さすがはユースフだな…。あーちかれた。俺は寝るぜ！」
ごろんと大の字で闘技場に転がるヒューガの横にボロボロのユースフも座り込む。
「ヒューガの本気か…まああそこまでやるとは思ってなかったがね。」
皮肉っぽい口調ながらもユースフの顔はヒューガの強さに認めたように真面目な表情をしているのだった…。
○試合結果
１Ｒ：ユースフ・エドワルド 圧勝
２Ｒ：ヒューガ・マクラッシュ 圧勝
３Ｒ：ユースフ・エドワルド 圧勝
ユースフ・エドワルド、決勝進出
『順風の王狼』 ネストリア
ｖｓ
キヲン
○試合
長身でしなやかな体躯をもつネストリアに対峙するとかなり小柄なキヲン。
端から見ると大人と子供でしかないが異能者としての力は容姿には影響を受けない。
ここまで勝ち進んできたキヲンに対してネストリアが油断する事はなかった。
…対峙するキヲンがまったく動かないのに対してネストリアの動きはまるで踊っているように華麗だった。
キィン！キィン！キィン！ネストリアの愛刀『神室』が煌くたびに硬い金属音が響いていく。
しかしキヲンの繰り出す攻撃をさばき続けるネストリアには相手の攻撃が様子見でしかないことを悟りつつあった。
「そろそろ決めてくれて構わないよ。」
その声に反応してか…キヲンの武器が鋭くネストリアの急所目掛けて走る！
『神室』での防御を潜り抜けた攻撃をネストリアは急所に受けるよりはと左腕でガードした。
「くっ…」
血しぶきをあげる左腕にかまわずに試合の流れを変えようと小道具の灰に注目させて身を隠す技にでる。
（うまくいったのか…？）この手の技は術者本人には成功したのかどうか分からない。
追撃をせずに静かにたたずむキヲンを見てネストリアは相手の死角に入るように静かに動き始める。
…ネストリアが技の成否について分かったのはキヲンの顔が彼の方向へ向けられた時だった…。
キヲンの最後の攻撃があたる瞬間…ネストリアの瞳は赤く輝きその体は青っぽく燐光を纏い強烈なプレッシャーを放つ！！！
その直後、攻撃をまともにうけたネストリアの体は吹き飛んだ…。
最後の一瞬、ネストリアの様子の変化に反応を見せたキヲン…。
「私の負けだ。」
大ダメージを受けたと思われたネストリアは何ともなかったかのようにキヲンに向けて宣言をするのだった…。
○試合結果
１Ｒ：キヲン 勝利
２Ｒ：キヲン 勝利
キヲン、決勝戦進出
『支殿の王狼』 ユースフ・エドワルド
ｖｓ
キヲン
○試合
ヒュンヒュンとキヲンの武器が上下前後左右とあらゆる方向からユースフへ襲い掛かる。
ギィィィン！！！
その度にユースフの投げナイフが武器を弾き攻撃の軌跡を微妙にずらす。
「…この間合いだとあんたに分があるみたいだな。」
キヲンの攻撃の軌跡を見切ってはいるが攻撃を仕掛けるタイミングの取れないユースフはぼやきながら、
何気ない様子でキヲンに向かって間合いをつめると打撃を繰り出す。
キヲンは避ける気配もさせなかった…がスッと体をずらしてユースフの拳を紙一重で避ける…。
「かかったな…」
打撃はおとりでしかなかった…組技へ持ち込もうとユースフの手がキヲンの腕を取った。
しかしその瞬間、キヲンの武器がユースフを背中を切り裂く！！！
「この距離で動きを悟らせずに攻撃できるとは…驚かせてくれるもんだね…。」
一旦つかんだ腕を離して距離をとるユースフ。
「まあ順風の王狼を破ったんだ。これぐらいは当然か…。」
（お互いどの距離でも戦えるなら…どの距離が俺に有利か…？）
ユースフはキヲンの武器の性質上連続で攻撃しにくいだろうと考えて多少のダメージ覚悟で接近戦の距離を選んだ。
しかしキヲンは接近戦で初めて出した攻撃でユースフの予想をはるかに越えたダメージを一瞬で叩き込むのだった…。
「強いな、あんた。おかげでこの祭りも結構楽しめたよ。」
ユースフは軽口っぽくキヲンの強さに敬意を払っているようだった…。
○試合結果
１Ｒ：キヲン 辛勝
２Ｒ：キヲン 圧勝
キヲン、優勝！！！
■第２回アリーナ終幕
「鋭く激しい攻撃を冷静に繰り出したキヲンさんが第２回アリーナを制しました！
キヲンさんには『第２回マスターオブアリーナ』の称号とエンブリア大陸最高のルーンマスターの栄誉が送られます！」
だが表彰台の上にはキヲンの姿は現れなかった。
キヲンは全ての戦いが終わった時、なんの迷いも躊躇もなく闘技場を立ち去っていたのだった…。
司会が慌てる様子が観客の笑いを誘いつつ参加者に惜しみない拍手が送られ「第２回アリーナinエンブリア」は終幕したのだった。
＜終わり＞
■管理人より…
エントリーして頂いた皆様本当にありがとうございました！！！
まずは大変お待たせしたことをお詫び申し上げます。アクション期間に重なってさっぱり進みませんでした…。
さてＨＰの３０００ヒット特別企画「第２回アリーナinエンブリア」どうでしたでしょうか？
前回で特に止めてしまえ〜と言う文句も出ないところかそれなりに楽しんで頂けたようでしたので、
つい調子に乗って開催してしまいました。
参加ＰＣも増え、また変わった趣向の戦いをする人もいたりと面白く結果を作成させてもらいました。
前回で出たご意見（修練度×２とか試合描写の変更）など盛り込んで見ましたがどうでしょうか？
ここまで読んでくれた優しい皆様。ヒマがあったりしたら感想やご意見など掲示板などに書いていただけたらうれしいかぎりです。
それではこの辺で失礼します。ホントにありがとうございました。
※試合描写内でキヲンさんサイドの描写が極端に少ないのですが、
これはエントリーの際に「キヲンへの描写を避けて下さい。」とのお言葉を頂いている為です。
決して管理人がキヲンさんをキライだからとかでは無いことをお知らせしておきます（笑）