AFFIXTUER
■２５８３年２月 フォトン近海
黒竜要塞ベドフォードからアーサー・シュレイム提督を救出しフォトンへと急ぐシュレイム艦隊。
その艦列の中に破壊後もすさまじいボロボロの船が一隻。
魔導船「ソル・レオン」はドラゴンゾンビに海中から支えられゴーストシップに曳航されていた。
ベドフォード要塞で破壊され沈没していたがアーサー救出のおりに一緒に持ち出されてきたものだ。
そのソル・レオン内を徘徊する影一つ…。
ミラージュの弟子である少年フィレット・トロンプレイユが好奇心から探検しているのだった。
しかし…
「…困ったなぁ。出口はどっちかな…？」
通路や階段が壊れている中を調子よく進みすぎたせいでフィレットは迷っていた。
「こっちも行き止まりかぁ…」
ところどころ壊れて進めないないところがあって外に出る道順を完全に見失ってしまっている。
キィ…パタン…。
「えっ？」
そんな時、廊下の先から聞こえた音にフィレットが驚く。
召喚生物の力で支えられているだけのソル・レオンは危ないので立入禁止のはずだった。
顔を引き締めてフィレットは音の聞こえた扉まで忍びよる。
「はぁ…あぅぁ…はぁぁ…うぅぅ…はぁぅぁ…はぁ…ぁぁ…うぅ…」
部屋の中からひどく荒く苦しそうなうめき声のような音がフィレットの耳を打つ。
鍵穴を覗き込むと部屋の角においてあるベットには記憶にある蒼い服の人物がベッドに倒れこんでいる。
「あのっ！大丈夫ですか？」
フィレットは慌ててドアを開けて部屋に飛び込むとベットに駆け寄る。
ベットに転がる女性はかなり苦しげな様子だった。
肩をつかんで揺するフィレットに向けた目も濁ったように焦点が合わず何かを見て怯えているようだった。
「アクアリィさん。しっかりして下さい！」
フィレットが名前を呼ぶとわずかに反応して目を向ける…しばらくうわ言を言ってるようだったが
徐々にすがりつく子供のような目の焦点がフィレットに合いだした。
「…あら？…可愛いわねぇ………フィレットくんだったかしら？」
顔を確認するようにフィレットにグッと顔を寄せるアクアリィ。
「えっ、えっ、えぇ〜！？！？！？」
フィレットが思わずのけぞるより早くアクアリィの唇が重ねられる。
チュッ…
やわらかい感覚が一瞬触れて…驚いて目を見開くフィレットの顔を見たアクアリィは…
一気に深くまでフィレットの唇を激しく貪る。
なんとか頑張ろうとしたフィレットの脳髄まで痺れさせてからようやくアクアリィは唇を離した。
「…ちょうど良かったわ…ちょっと助けて欲しいの…恐くてしかたないのよ…」
ツゥーと二人の唇の間に出来た唾液の橋がすぐに落ちる。アクアはすこし上気した顔で全身をからみ付かせた。
「…っな、何をしたらいいんですか？」
体にまとわりつく女性のやわらかさに少しでも動いたら変なところでも触ってしまいそうで動けなくなるフィレット。
「あたしを強く…抱きしめて…」
耳元に響く甘い声の意味をしばらくボーとした頭で考えていると、
密着したアクアリィの体からわずかな震えを感じて本当に怯えているんだと理解するフィレット。
だから緊張でガチガチに固まった腕をなんとか動かしてアクアリィの細い体を抱きしめた。
やわらかい肢体はきつく抱きしめると不思議な弾力を返してきて女性を抱きしめている事を強く意識してしまう。
そうしてアクアリィの震えは収まっていくのと正反対にフィレットの鼓動は速くなっていく。
「ふふっ…心臓がドキドキいってるわ…」
しばらくしてから落ち着いたアクアリィがフィレットの肩に頬を載せる。
フィレットの鼻先をアクアリィの髪から漂う甘い香りがくすぐる。
「助かったわ、フィレット君…ついでと言ってなんだけれど…もう一つお願いしていいかしら？」
どうやらアクアリィが落ち着いたと分かって緊張が解けるフィレット。
「出来る事だったら！」
なんとなく上手く出来たと自信を持ったのか男らしくフィレットが胸をはる。
「一月も我慢してて…つらくて…たまらないのよ…お願い……」
そう言うとアクアリィは返事も待たずにビックリした顔のフィレットにからみついたままベットへと倒れこんだ…。
・・・
「アクアリィさん…やわらかいや。」
ベッドに転がる二人。フィレットはアクアリィの裸の胸に顔をうずめて幸せそうにしている。
「この事は皆には秘密よ？」
アクアリィが胸の中のフィレットの唇に人差し指をあてて言うとでうんうんと頷く。
動く頭にあわせて弾力のある大きな胸が波打つ。
なんとなく子供が出来たらこんな感じかしらと思いながら髪を撫でてやるアクアリィ。
しばらく緩やかな時が過ぎる…。
「それじゃあそろそろ出ましょうか？」
なごり惜しそうにもう一度アクアリィに抱きついてからフィレットも支度を始めた。
身支度が整うと二人で部屋の外に出る。
「いつかまた助けてくれるかしら？」
アクアリィがフィレットに軽いキスをする。
「うん、いつでも言ってね！」
フィレットは照れ隠しか元気に駆け出しながら言う。
「秘密だから…先に行くね！」
フィレットはアクアリィに軽く手をあげてから廊下の角を曲がって消えていった…。
＊ ＊ ＊
■キャスティングリスト
フィレット・トロンプレイユ 男／２２歳／妖魔／１６８cm／４９kg
ミラージュにあこがれる少年怪盗。方向感覚がすごいらしい。
今回のイケニエ（笑）
アクアリィ・トゥデス 女／２７歳／半吸血鬼／１６６cm／４２kg
要塞内部に潜入して３ヶ月ついに魔道船「ソル・レオン」を手にした「魔女」。
その行動は何を思ってなのかは誰にも分からない。