AFFIXTUER
■２５８３年６月 首都ファティマ
「アーサー様、どこに行くのだ？」
ガヤガヤと騒ぎたてる一般市民の向こうがわにアーサーの姿が見え隠れする。
ブリューナがアーサーの元へ行こうとしても人垣が邪魔になってたどり着けない。
「アーサー様！」
アーサーは市民に小突かれてどんどん先に進んでいく･･･。
「アーサー様！アーサー様！こら貴様ら、どくのだ！」
市民を無理矢理押しのけて進もうとするブリューナだが市民はまったく動かない。
そしてアーサーの進んでいく先は丘になっていて一人の男が待っていた。
…デービット・クラウザー…
手には呪式拳銃を握りじっと立っていた。
その姿を見た市民達は大きくどよめき叫び出す！
「聖女の盾アーサー、狂王を倒してくれ！」
「炎の剣アーサー、お願い狂王を倒して！」
「英雄アーサー、狂王からエストーラを守って！」
言いながらアーサーを小突きデービットの元へ押し出していく。
アーサーは顔を一瞬歪めてからデービットの元へ自分で歩き出す。
「アーサー様、一人じゃダメなのだ！待つのだ！…待ってぇぇ！！！」
ブリューナの脳裏にうわさに聞いた海賊王リチャードの死に様が思い浮かぶ。
まわりの人間が一騎打ちを望み、そして一騎打ちであっさりと砕かれたリチャード…。
しかしブリューナの声が聞こえないのかアーサーはデービットに対峙する。
「……………！」
「………｡」
すこしの言葉を交わすと戦いが始まる。
だが…アーサーの剣は一撃目の呪砲で飛ばされる。
二撃目の青い光弾は右腕をもぎとる。
「いやぁぁぁぁぁぁ！！！」
目の前に飛ぶアーサーの右腕にブリューナは錯乱してアーサーの元へ駆け出す。
どうやって辿り着いたのか…ダラダラと血を流すアーサーの元へ泣き叫ぶブリューナが辿り着く。
いつのまにかアーサーとブリューナを遮っていた人垣は二人を囲む形になっていた。
デービットは丘の上で動かない。
「英雄アーサー、早く狂王を倒してくれ！」
「早く！」
「早く！！！エストーラの為に！！！」
周りを囲む市民はボロボロのアーサーにひたすら声をかける。
アーサーは市民の声に答えてゆっくりと立ち上がりまたデービットに向かっていく。
ブリューナはアーサーにしがみついて止めようとするがアーサーの体は鉛で出来ているかのように
重くわずかばかりもその歩みを遅らせることすら出来ない。
だがブリューナは体がきしむのも気にせずに渾身の力を込め続ける。
「…なんで、なんでアーサー様はあんな連中の為に戦うのだ！？」
心からの叫び、アーサーがいなくなるかも知れない。
その考えはブリューナの心を芯まで切り刻みはげしくかき乱した。
「なにもしない連中、人任せのあんな連中の為になんでアーサー様がこんな目にあうのだ！？」
…アーサーは止まらない。ゆっくりとデービットにむかって歩きつづける。
だがアーサーの顔はいつのまにか深い苦しみの表情になっていた。
「そんなに苦しそうなのになんで！なんで止まってくれないのだ！？」
アーサーが止まる。…だが市民の声のボルテージが上がるとまた前よりも苦しそうな顔で歩き出す。
「どうして…止まってくれないの…」
ついに力尽き倒れ込むブリューナ。視線だけでもとアーサーを目で追う。
そしてブリューナの目に写っていたアーサーはデービットの呪砲にその体を砕かれて…倒れくずれる。
「あぁぁぁぁぁっ−−−−−−！！！」
その目の前のアーサーの姿にブリューナは心が焼き切れそうな叫びをあげた…。
………。
ブリューナが気が付けばまわりは月明かりに照らされた部屋だった。
「………ここは………ファティマの宿…なの…だ…」
視界がぼやけているので目をこすると涙でぬれているようだった。
ゆっくりと身を起こすブリューナは手の甲についた涙を不思議そうに眺める。
胸にあいた空虚な気持ちが何なのか…止まらない涙をそのままに考える。
「…アーサー様？…あれは…現実だったの？…それともただの夢だったの？」
一気に先ほどの味わった心臓が裂けそうになる喪失感が蘇る。
「…っん！…アーサーさま…アーサーさま………アーサーさまぁ」
ぐずぐずと泣きながらブリューナはベッドを出る。
そしてピンクのパジャマ姿のままアーサーの部屋を目指す。
「…アーサー様。中にいるはずなのだ…」
アーサーの部屋の扉前…。もし扉の向こうにアーサーがいなかったら…。
先ほどの記憶が現実だったなら…。生まれて初めて恐ろしほどの恐怖に捕われながら
ブリューナはアーサーを呼びながら扉を叩いた…。
■キャスティングリスト
ブリューナ・アルフェルム 女/16歳/妖精/138cm/3?kg
アーサーに初恋して女の子に目覚めて、ひたすら好きという感情を暴走させている（笑）加害者（爆）
アーサー・シュレイム 男/23歳/人間/176cm/61kg
被害者（笑）
■プラリア送った時の私信
大好きなアーサーのそばにいてホントに幸せすぎて…、それを失う可能性を考えてしまった時にすごく不安になってます…。
その不安は毎夜ブリューナの悪夢として噴き出し始めました。
出来たらアーサーが同じ布団で手を握って眠ってほしいところです（笑）