AFFIXTUER
■2001/06/26：新宿、バー「軍神」倉庫
ドンッ！ドンッ！ドンッ！ドンッ！
重低音が響く。
激しい律動は音を叩きだしている人間――諏賀龍耶の心を現しているようだ。
「雷砕作戦」。
チーム「咬竜會」の大きな行動であった神宮司恭一郎から最強の看板を奪う計画は失敗に終わった。
神宮司の元に腐るほどの魔人が集まっていたせいもあるが、龍耶は自分の不甲斐なさを呪っていた。
恭一郎に群れる大勢の魔人を仲間がなんとか抑えている間に、短期決戦で勝負を決めようと、恭一郎に向った矢先。
ヤツは素早い動きで目の前まで接近してくると地雷也を放った。
周りは乱戦でヤツは仲間に当てぬように近距離で威力を抑え有効範囲を狭めていた。
そうヤツはオレの目と鼻の先で地雷也を放ったのだ。
普段なら間髪いれずに敵の接近と同時に拳を叩き込める距離だ。
だが戦いに集中しヤツの動きに逐一注意を払っていたはずのオレの体は動きはしなかった。
そしてヤツは目の前で地雷也を放つ。
飛び込んで来て一瞬の間もなく地雷也を放つとは馬鹿げた事だ。
地雷也は体内の気を爆発させて周囲に無条件に雷を放つ技だ。
普通ならば、かならず溜めの一瞬が必要なはず。
それをヤツは力を使った飛び込み直後に放った。
しかも威力を最小に抑えるなんて芸当までしてだ。
ヤツは地雷也だけを数年修行してと聞いたがそれでも信じられん芸当だ。
後から聞けばしかもヤツはその前に２発も地雷也を放っていたらしい。
これも底なしの霊力としか言い様がない。
どんなに修練をしようが消耗する霊力の量を劇的に減らしたりする事は出来ないのが通例だからだ。
そしてヤツが放つ地雷也を何をする事もなくオレは喰らってしまう。
いつものオレなら地雷也を喰らいながらでも拳を繰り出したはずだった！
多少の傷なら仲間に治してもらう事も出来るからだ。
だが現実にはオレはただ地雷也を喰らい傷を負わされただけだった。
「何故だっ！」
オレの最強にかける気持ちはそんな程度のものだったのかっ！
かなわなくとも拳を繰り出す気概すらオレには無いというのかっ！
自分自身にどうしようもなく腹が立つ。
それともオレに何もさせない事が出来るほど恭一郎は強いとでも言うのかっ！
オレだって、そこらの魔人にはまず負けない程度の自信がある。
接近戦ならばオレに勝てるものは四条会館だとて両手で数える事が出来る程度しかいまい。
如何にヤツの飛び込みが早かったとしても接近戦の距離になれば必ず攻撃できたはずだっ！
只の一撃すら繰り出す事すら出来なかったのは何故だっ！
結局、問題は自分の心にあるとしか考えられない。
もしくはヤツには魔王の加護でも憑いているか…だ。
そして最後に恭一郎が言った言葉がさらに龍耶の心を蝕んでいた。
勝利宣言。そして強者として相手をしてやると馬鹿にした言い方。
どれ一つとっても恭一郎への憎悪を生み出す事しかしない。
「ヤツに協力だと？」
恭一郎のヌルイやり方では何も変わらない。
変わったとしても無駄が多すぎる。
だからこそ最強の看板を奪い自分達が・・・。
そう考えたオレがヤツに協力などどう考えれば出来るというのだっ！
自分の体すら自分の気持ちを裏切り切り刻む。
どうすれば良い？
答えが出せないまま龍耶は自分を痛めつけるように全力で鉄砂入りのサンドバックを殴り続けるのだった。
■キャスティングリスト
・諏賀 龍耶（スガ タツヤ）／男17／チーム「咬竜會」総長『轟竜』
■作者コメント
なんとなくリアクションでどうしてそう判定されたのか分からない所の叫びです（爆）