AFFIXTUER
厳しい寒さの中ながら穏やかな日差しが公園を照らしている。
その中に居る男たちの辺りが騒がしい。
「ちょっとちゃんと聞いてるの！ まったくこっちだって暇じゃないんだから！」
透き通る様な女性の声が一人の男が持つ携帯電話から響き渡っているのだ。
九州にいる竜山泊竜将『麗竜』ことネネからの連絡なのだが…。
ブチッ
あっさりと騒音の元を断った男を少し唖然としながら見ていた少年が気を取り直すように襟元を正す。
「轟竜、それに崩竜。僕は市街の鬼人どもを叩き伏せてきます」
（僕は強者たる二人の目にどう映っているのだろう？）
「今の僕には奴らの相手が相応ですし、自分より弱い存在を相手にいきがっている奴らは我慢なりませんから……」
（そう僕は二人のように、今よりももっと強くならないといけない）
「では、ご武運を！」
少年はそれだけ言うと一人で駆けだしていく。
凛々しく引き締めた表情はどんな決意を抱いているのか？
若き剣士、竜山泊竜将『星竜』こと若宮醍那は自分の戦場へと向かった。
次に動き出したのは革ジャンに鉢巻の青年。
「てめぇの力を見せてみろ」
試すようにニヤリを笑う相手に、竜山泊竜将『崩竜』こと那智丞太郎は振り向いた。
「判っている！」
丞太郎は革ジャンのポケットからグローブを取り出した。
（物部武流…どれだけ強さを見せてくれるか？）
気を引き締めるようにグローブを身に着け引き締める。
「俺をがっかりさせないで楽しませてくれよ！」
強敵との激闘を期待して言い放つと丞太郎はゆっくりと歩き出した。
最後に残った竜山泊総長の竜将『轟竜』こと諏賀龍耶はベンチに腰を下ろしたままジッと動かない。
黙示録事件でエレクトラを叩き潰したという神宮司恭耶。雷神と讃えられたヤツが生きている。
その噂を知りヤツを殺したと言われる銀髪の鬼であり、またヤツと親友だったともいう物部隼雄の関係者が、ヤツへの情報を握っていないかとこうして東北の物部の里までやってきたのだが…。
だがそこには闇の紋章最強とも言われる『地』を宿す物部当主の武流がいるはずだ。
まだガキでまともに力を使えなかったらしいが『地』の紋章覚醒で恐ろしい力を振るうと言う。
「ほっとけねぇよなぁ」
『地』の紋章なぞ無くともその血は恐るべき力を武流に与えているはずだ。
強者が人の力を借りてそれを誇っている…それは龍耶にとって力ある者が持つべき誇りを吐き捨てた行為でしかない。
「ほっとけねぇよなぁ」
そんな奢った者は叩き伏せて目を覚ましてやらなければならない。
それが強者たる者の責任だ。
だがそれだけでなく強者との戦いへの予感に血がたぎっている。
「ここでも楽しめそうだな」
龍耶は物部の里の方向へ顔を向けると不適な笑いを浮かべるのであった。
■キャスティングリスト
ネネ（−）／女、？歳
元参謀の黄鈴姫に誘われて竜山泊へ参加した。
若宮 醍那（わかみや だいな）／男、１５歳
少年剣士。龍耶の強さに憧れて竜山泊へ参加した。なにやら秘密を抱えているらしい。
那智 丞太郎（なち じょうたろう）／男、２２歳
一撃必殺の道を突き進む格闘家。強さを求めて強い奴と戦う為に若宮志津江の元にいたが恭一郎と龍耶の決闘を見て思う所があり竜山泊へ参加を決意。
諏賀龍耶（すが たつや）／男、１８歳
最強を目指す格闘家。また武断主義を掲げる「竜山泊」の総長を務めてもいる。