AFFIXTUER
「貴方は・・・どちら様ですの？」
男は目の前の少女の姿をした物に圧倒されていた。その容姿の造形もさることながら感じるのだ。
自分よりも上の存在として・・・
高貴なる美しさを持つ者だけが放つオーラの様なものを・・・。
ザッ！
最初の衝撃から立ち直るとすぐに男は跪いた。
そして自分が吸血鬼の巣窟に潜む何かを滅ぼしにきたある組織の守護者である事を初めに全てを語った。
「・・・そう・・・」
それだけ言うと少女はゆっくりと目を閉じた。その表情は穏やかでありながらまるで自分が滅ぼされるのを決意したような表情。
「いえ、私には貴方を滅ぼすつもりなどありません！」
男は少女にそのような顔をさせた事に罪悪感を覚えて叫ぶ。
「私は吸血鬼に家族を殺され吸血鬼を全て滅ぼすと誓いましたが・・・それでも貴方に何かしようとは思えません！」
心の中の葛藤か・・・男は声を絞り出すように話す。
バンッ！
そこへ男の同僚らしいサーベルを構えた男が部屋に殴り込んできた。
「何をしている！吸血鬼は全て・・・！？」
瞬時に様子を見てとり仲間を殴り飛ばす勢いだった男も少女を見て凍り付く。
「くっ、何かの力か。オレは惑わされんぞ。吸血鬼！！」
どうやら強力な意志を持っていたらしく男は自分の信念を崩しはしなかったらしくサーベルを振りかざして突撃する。
「・・・なぜ？・・・」
だが近づくにつれ心は砕け、声を聞いた時点で男は敗北した。
少女の脳天を断ち切ろうと振りかざされたサーベルが寸前で停止する。
「くっ・・・おい、オレはココではなにも見なかった・・・いいな！」
同僚にそれだけいうと逃げるようにその場をサーベルの男はその場を去る。
声をかけられた男は胸をなで下ろして少女に跪いたままだ。
「それではいかがなさいますか？」
少女はゆっくりと目を閉じて数瞬考え込んだが唇を開いた。
「外へ・・・セツを外へ・・・連れて行って下さいね？」
男は恭しくうなずくと手をとり少女をエスコートする。地下室を出て館の外へ出たとき、少女は月の光に目を細めた・・・。
「綺麗な・・・月光・・・」
前を歩く男の首筋が月明かりに白く浮き上がったのを見た少女は足を止めて男を呼んだ。男はただ無言で腰を下ろす。
少女の顔と同じ高さに男の顔がおりてくると、少女はゆっくりと男の頭を両手で挟む。
少女の手に導かれて男が頭を傾けると少女の唇がそこへ触れる・・・。
ビクン！
男は触れた唇の柔らかさとその後の己を犯す牙の感覚から脳髄から腰まで激しく走る快楽を引きずり出された。
ほんの数秒の間に強力な絶頂を味わい茫然自失状態で男はゆっくりと倒れ込んだ。
「さすがは・・・守護者は・・・美味しい・・・ですわね・・・」
そして男から興味を無くしたように辺りを見回す。
「それでは・・・先に・・・行きますわ・・・」
倒れた男に一言かけると少女は夜の暗闇の中へと消えていった・・・。
■キャスティングリスト
セツ・ドロレス（−）／女、？歳
どこかで眠っていた吸血鬼。