「想い」

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保険委員会へ掛け合って多少の人を回してもらった。
次々と運ばれてくる怪我人や囁きで無力化してしまった人達を治療していく。
統合風紀委員以外の人は麻薬中毒患者を抑えるように拘束して治療する。
看護師の想い出の所為か戦場にいるようなデジャブを覚えた。

「やっぱ良秋先輩はスゴイな。外の信徒を一人でガンガン倒してた。俺も助けてもらったよ」

一人の怪我人の声に我に返った。
見てみると腕から血を流した統合風紀委員が痛みに顔をゆがめながら話している。

（由秋さん・・・）

由秋さんを意識したら過去の思い出で見たありとあらゆる怪我人死人の顔が由秋さんに見えた。

（あぁぁぁぁっっっ・・・）

叫びを飲みこんでも、胸が締め付けられるような不安が止まらない。
あの人は強いと信じていても、強い運命の力は強い囁きの力を伴う事は誰にも変えられない。

美礼さんも命を掛けて運命を発動させたと聞いた。
生真面目な由秋さんが自分も命を掛けてと、自分を省みずただひたすら前へ進むことを選んだとしても
不思議に思わない。
そんな彼を好きになったのだから・・・。

「それでも、それでも、生きていて欲しい」

もし自分に出来る事があるとしたら何だろう？

「ごめんなさい。ボクちょっと行って来ます！」

もつれる足を前に出してボクは走り出す。

「えっ」
「ちょっと、危ないよ！」

一緒に治療していた保険委員達の声が聞こえる。
危険かもしれないけど、でも失いたくない想いは止まらない・・・。