「ムンスパ」 プラリア 作者：白拍子さん 掲載日：２００１．７．１２
某月某日／船上にて
私の名は、エリザベト・テューダー
敬愛する父様と母様の元を離れ、どれだけの月日がたったのだろうか？
「修行」という二文字。
確かにそれもある。しかし私自身求める何かを探して、旅に出たのだと思う。
父様も母様も私ぐらいの年に、一人で生きていたという………
それに比べれば、私はなんと恵まれているのだろうか。自分で選び旅立つことを……今乗っている船、人員、探索に必要な道具類……そして、なんといっても母様の胎内から一緒であった、妹のヴァニティ。
行き先はどこでもよかったが、あえて厳しく人の通わぬ、アフリカを選んだ。
それを知って、ヴァニもついてくるといい出したのには、閉口したが……
まあ、いい出したら聞かないのはわかっている。
事実今現在も、私のベッドをその巨体で占有している。
『独りで寝ているとの、寂しいのじゃ…』
と、兎のぬいぐるみを抱えながら、安眠に着こうとしているのを、ものの見事に邪魔をした。ゆえに、こうして机に向かい、蝋燭の灯火を頼りに日記をつけている。
まあ気が向いた時に書いているものだ。こういう時の時間つぶしにはなる。
それにしても……
ぷにゅ、ふにふに
私の体がヴァニと比べると、どうしても劣っているのは、いたしかたない。父様も母様より肉体は劣っていたが、召還の魔と知性が母様を支えつづけた。私は血としてその部分を濃く受け継いだようだ。
そしてヴァニは、母様の頑健な肉体を、そして更にその体躯は成人と比べても、並外れている。
しかしその中でも、あふれんばかりの巨大な胸は、半分くらいは私に来てもよいと思うのだが………まったく。
そうこうしているうちに、私の忠実な下僕、ナサニエルが私の部屋に駆け込んで来た。私とヴァニの殆ど下着同然の姿を見、硬直したが報告を続けるように諭すと、不審な船が接近しているとのことだ。早速警戒をするように命令し、私も準備を整えに行く。続きは後ほど書く事にしよう。
まったくナサニエルは幸運な男だ、私がとっさに投げたペン立ての直撃ですんだのだから。ヴァニが起きていれば、ナイフかもっと質量のあるものが高速で、しかも正確に彼を直撃してるはずだからだ、まったく。
さて、続きだ。
先ずは私のゴーレム「こうりん」を偵察に飛ばした。
闇夜でも見える瞳が、私の視界に重なり不審な船の船上を網羅する。
水夫達が手に武器を準備している所を見ると、どうやら襲撃してくるようだ。
まったくもって、不愉快である。こういうものたちは、再機不能なまでに叩き伏せるがよいだろうと、瞬時に考察した。
戦闘の準備だ、悟られぬように水兵達に迎撃の準備をさせ、持ち場につかせる。「るいじ」も、いつでも飛び出せる。
ただ……
私のベッドを占拠している、ヴァニを起こさなくてはならない。それが一苦労なのは、私自身がよくしっている。
とりあえず、先ずは普通に体を揺さぶったり、軽く叩いたりするが、無論その程度で目が覚めるヴァニではない。
時間がもったいないので、少々手荒にしよう。
かぷっ
ようやくヴァニが起きた、やはり噛み付いたのは利いたようだ。
まだぐずっているところをなだめて、簡単に状況を説明する。
すると、嬉々として闘いの場に向かっていった。
わが妹ながら、まったく。
結果だけを書こう、撃退した。
十分な準備そして、私のかろんとこうりん、真っ先に飛びこんだヴァニ。
私の指揮も、的確に効果的にみんなを動かした。
それにしてもヴァニだが、拳を真っ赤に染めて、楽しそうに帰ってくるのはよいが、さっさとなにか羽織ってほしいものだ、はしたない。
はやく地面のある所に、着いてほしい。
海の上は、不安でしょうがない。
泳げないのが、悪いのかどうかしらぬが、こればかりは、どうしようもない。
さてペンを置こう、もうしばらく我慢すれば、未開の大地アフリカだ。
ヴァニを添い寝して、眠りにつこう。
大地を踏むことのできる、夢がよいな。
了
【作者解説】
スパイラル・ムーンで、シャルとヴィーの双子の娘達が、アフリカに行くところを、まいんさんのＰＣ、エリザベトの日記という形でのプラリアです。
アフリカは平和でしたね…（笑）
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