エタムン・プラリア 作者：ＭＲＺさん 掲載日：２０００．７．１５
アルム・ナート／第３回アクション別紙プラリア
双刃列伝！！
第１話：「蘇る過去の記憶！ アリエッタを救え！！」編
written ｂｙ．ＭＲＺ
■第１刃：「すれ違う想い！」
１１月３０日。銀嵐槍兵団長アリエッタ・ウィンドデイルは、単身飛び出していった。
「…！ チ、しまった！」
銀嵐槍兵、双刃の魔剣士アルム・ナートは最低限の装備のみで直ぐに飛び出し、後を追う。アリエッタはサイレントゲイルを失ったため、自分の足で移動しているはず。今ならば、まだ間に合う！
「あれだけの人々に、諭されたというのに…。まだ分からないのか！ あの人は！」
数々の人々の見舞いを受け、残された者の気持ち、生きることの大切さを理解したはずなのに。
アルム自身も、それを説こうとアリエッタの元を訪れたが、他の者達が言いたいことを全て言ってしまったので自分の出る幕はなかった…。同じ事を繰り返し言わなくてもアリエッタなら分かると思っていたが…。
「…私は…又繰り返すのか！？ あの時と同じ事を！」
走るアルムの脳裏に、兄の姿が浮かぶ。
みんなが傷つくのを見たくないため、誰も傷つけないため、アルムの兄はたった一人で魔軍に挑んでいった…。兄のお陰でアルム達は助かったが、兄はそれ以来行方不明…。
「確かに…アリエッタ様の気持ちも分かる…。自分の為にみなが傷つく…誰も傷つけないためには、こうするしかないことも…！」
屋根から屋根へ、軽業と騙し絵の靴により遊郭まで一直線に駆けるアルム！
「そう…分かってはいる…分かってはいるが…！」
通行人の頭をも踏み台にし、敵魔族も無視して進む！ 靴の効果により、常識では考えられない場所も駆け抜ける！
「分かってはいるが…！ 分かるわけには行かないっっ！！」
「私は、もう同じ悲しみを繰り返さない！ 同じ悲しみを与えたくない！！ だから、戦う！ だから生きる！ 自己犠牲の気持ちは、分かるが…分かるわけには行かない！！」
叫ぶアルム。アルム自身の心の叫び…。
「！！ だからか…」
急に立ち止まる。
「…アリエッタ様も、分かってはいるんだ…。しかし、分かるわけにはいかない…。今の、私と同じだ…」
そう、アリエッタとて一団の将。そんなことは分かっているのだ！ しかし、それでも単身乗り込んでいった！ 自らの感情にまかせて！
「…理屈ではないのだな…フン…そういうことか…」
アルム自身、何かを悟る。その顔には先程までの焦りの色ではなく、普段の余裕の笑みが浮かんでいる。
「ならば…行くところまで、行くしかないだろうっ！」
再び駆け出すアルム！
そう、それならば…言葉で何を言っても無駄。それならば！ とことん着いて行くしかない！
「あの方も、勝手に動くのならば…その側で戦うのも私の勝手！ 止めるのが無理なら、直ぐ側で共に戦うのみ！ そして、生き残る！ それが唯一、アリエッタ様を救う方法」
駆ける足が速くなる！
「これが…私の戦い…！ 同じ悲しみは与えない…同じ悲しみは繰り返さない…」
そのままアルムは駆け抜ける！
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
■第２刃：「アルムの過去！ セブンズライフの狙い！！」
「そういえば…」
自分の気持ちに決着を付けたアルムは、今回の敵について考える。
「何故、セブンズライフはアリエッタ様を狙うのだ？」
「…奴の狙いは一体なんだ？ アリエッタ様の命ではない…だとすれば…」
「！！ まさか！」
アルムは嫌な予感がして足を早める。
「奴の言動や行動は…兄の時と同じだ！ 人間の負の感情を湧き起こさせる…そのための行動！ とすれば…」
…アルムの兄も、今回と同じ様な状況に陥っていた。魔族は、執拗に兄の心を攻め続けた。アルムの脳裏に忌まわしき記憶がよみがえる…。兄の姿と共に…。
−−−回想−−−
アルムの両親は殺された。魔族により。両親は兄やアルムを護るために死んだのだ。
魔人の声…。
「お前のためにみんなが死んでいく」
「…なぜだ？ 何故そこまでして力を拒む？」
「…俺が憎くないのか？ 俺を倒したくないのか？」
あの時の魔人の声…。忘れもしない…。
「…父さんを殺した手で、僕に触るなぁ！！」
兄さん…。人一倍優しく、愛情に溢れた人だった…。それが仇となったのか…。
「…ククク、父さんを殺した手で…か。確かに、俺が殺した。だが、…あの男を殺したのは、お前でもあるんだぞ」
「！？」
「そう、お前の為に死んだんだ」
「仲間達も、お前の為に死んでいった…。みんなを殺したのはお前だ、お前の愛だ…」
「…そ、そんな…ことは」
そう、これは私の記憶。過去の記憶。兄の記憶。
「お前を愛する人間…お前が愛した人間…、みんなお前のために死んでいくんだな…」
「…僕が…みんなを…」
兄の体が震える。
「両親、仲間…。今度は、戦団の連中か？ それとも…お前の妹の番か？」
「！！」
その言葉に目を見開く。
「お前の愛は、まるで凶器だな」
今回と同じだ…。アリエッタ様を嗾けるセブンズライフと…。
「なぜ、お前はそこまで人を愛することが出来る？ この俺と同じ、魔の血の濃いお前が？」
「ち、違う！ 同じじゃない！ 僕は…お前とは違う！！」
「…どうかな？ お前が愛した者が、お前のために死んでいく…。まるで、悪魔に魅入られた者のように…」
「…悪魔…この僕が…？」
自分を守って死んでいく仲間。
自分を守って殺される仲間。
自分を守って死んだ父さん。
「…僕は、僕は！」
「怖いか？ 自分が？ お前の為にみんなが死んでいくのが…？ しかし、怖がることはないぞ。ちゃんと、解決策がある」
「…？」
「愛さなければいい」
「！！」
「本当の魔人になれば…誰もお前を愛さないし、誰もお前のために死にはしない…」
−−−回想終了−−−
これ以上の記憶はない。この後、兄は単身魔人に挑み…行方不明に…。あの魔人がどうなったのか？ 兄がどうなったのか？ それは分からない。
「そうだ…あの時と同じじゃないか！ そうか！ 分かったぞ…セブンズライフの狙いが！！」
アルムの瞳に怒りの感情が灯る！
「アリエッタ様の、魔人化っっ！！！」
折しも、アリエッタは「妖刀・闇乃霧雨」を持っている！
「あの刀は未完成！ 聞いた話では、負の感情を増幅させ魔人化させるという！ まさに敵の狙い通りではないか…！」
セブンズライフは、アリエッタを魔人にしようとしている。何故、そうするのかは分からないが…！
「させない！ それだけは、絶対にさせない！！」
同じ過ちは繰り返さない！ 無呼吸をも使い、一気に加速するアルム！！
「愛があるから、今の私が居る！ 愛があるから、悲しむこともできる！ だから、私はアリエッタ様を護る！ 私は迷わない…絶対迷ったりしないっ！！」
アルムはアリエッタを追い、遊郭へと飛び込んでいく…！
１２月１日。
アリエッタを奪う力…、アリエッタを護る力…。
決戦が始まる！
＜終わり＞
【管理人紹介】
ＭＲＺ様より頂いたアスターの銀嵐槍兵アルム・ナートさんのプラリア双刃列伝第１話です！
旗頭アリエッタを救おうとするアルムさんの心中がよく分かるお話です。
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