エタムン・プラリア 作者：ＭＲＺさん 掲載日：２０００．７．１５
アルム・ナート／第６回アクション別紙プラリア
双刃列伝！！
第４話：「『正』と『負』の狭間で…！ 決意の刻！！」編
written ｂｙ．ＭＲＺ
■第１刃：「零（ゼロ）の感覚の中で…！ アルムの真意！！」
闇…。静寂の中に彼女は居た…。
その瞳は虚ろで光さえ失ったかに見えていた。
その心は、負の感情に支配されていたかに見えた。
しかし、彼女の心には…闇のメッキの奥には…諦めはなかった。
銀嵐槍兵アルム・ナート。いや、今はヴィヴィ側についた裏切り者…。銀嵐槍兵からは除名されている。闇・双刃の魔剣士…。
「……」
オルゴールの音楽が響く。
繰り返し繰り返し…。
かつての仲間達の返り血で紅く染まった体。その器を突き抜けて、アルムの心の奥底に深く染みいるオルゴールの音色…。
「…私は…まだ…生きている…な」
ぽつぽつと呟くアルム。その瞳には、僅かながら光が戻っていた。
「…アリエッタ様も…こんな…感じ…だったのか…」
アルムは今、狭間の感覚の中で戦っていた。そう、正でも負でもない…言ってみれば『ゼロの感覚』の中で…。自分の意識を保つ限界ぎりぎりの戦い…。誰にも分からない孤独な戦い…。
唯一の味方は、兄の形見…。オルゴールの音色が、彼女を限界ギリギリで食い止めている。
オルゴールの音色が、一種のキーワード。それによりアルムの心は、呼び戻されるのである。
そう、アルム・ナートは、完全に魔に染まっていたわけでは無いのだ。彼女の本当の狙いは、ヴィヴィに近づき、「アリエッタを元に戻す方法を見つけだすこと」である！
しかし、並の覚悟ではヴィヴィに近づくのは不可能！
よって、自らギリギリの所まで闇に染まり、ヴィヴィも、かつての仲間も、そして自分自身さえも欺き、「アリエッタを護る」という存在意義のみを心の糧に、ヴィヴィに接触したのである。
一歩間違えば完全に魔人になってしまう。しかし、中途半端な心ではヴィヴィに殺されるのは確実！ 完全に取り入るには、強烈な自己暗示で自分自身をも欺くこの方法しかなかったのだ！
そして、それは一応の成功を見せている。
なんと言っても、アマクニ工房の襲撃の手柄が大きい。かつての仲間達を容赦なく斬りつけ、『アルマンディン』の破壊に成功。
しかも、銀嵐槍兵の仲間はアルムが完全に寝返ったと思っている。
「敵を欺くにはまず味方から」と言うが、自分自身さえも欺いたアルムの真意に、ヴィヴィとて簡単には気づくはずがない。
『アリエッタを護る』…この概念は正にも負にもなる。アルムはそれを利用し、さらに兄の形見のオルゴールの音色を一種の自己暗示を解くキーとして利用し、この『ゼロの感覚』の中で彷徨っているのである。
ゼロの中では、味方も敵も関係がない。アリエッタを護る。それだけがアルムの体を動かす。
「…急がなければ…長くは…持ちそうも…無い…な」
呟くと瞳を閉じるアルム…。
「（フゥゥ〜……）」
息を吐く。そして、瞳が開く。
「フン…！ アリエッタ様に害をなす奴らが来たようだ…。アリエッタ様は…私が、護る！！」
その瞳は、いつものようにどす黒く濁っていた。
オルゴールの音色が止まる。アルムは再び『闇』に戻ったのだ。
そして、再び戦いの時は迫る…。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
■第２刃：「決意の刻！！」
ギィインッッ！！
金属音の音！ 剣と剣が火花を散らす！
「アルム！ 目を覚まして！！」
かつての仲間が叫ぶ！
「…目を…さます…だと？」
虚ろな瞳の、アルム・ナートは聞き返す。
「アリエッタ様は…もう戻ってこないの！ 今の彼女は、ヴィヴィ・ザ・セブンスライフなのよ！」
戦いの場。ここは戦場。
アリエッタ（ヴィヴィ）の命を狙う、かつての仲間と対峙するアルム。
「…だから…どうした…」
「だからって…。分かっててやってるの！？」
「…私は、アリエッタ様を護る！ ただそれだけだ！」
アルムの言葉に、女性剣士に怒りの感情が沸き起こる！
「この、分からず屋ぁ！！」
カキィィ！
「！！」
鋭い剣の一閃！！
女性剣士の放った一撃が、アルムの胸のペンダントを弾く。
…♪〜 …♪♪− 〜♪〜 −♪…
それは地面に落ち、悲しげな音色を奏で始める。
アルムの兄の形見。オルゴール。
「…」
「ほら！ あなたのお兄さんも悲しんでいるわよ」
女性剣士は、しばし音に聞き入っていたが、思い出したようにアルムに叫ぶ！
「…！！ 貴様達に…何が分かるっっ！！！」
「！！」
急に声を荒立てるアルム！ さっきまでとは少し様子が違う…。
オルゴールの音色…。
「…く、くくく…貴様達…本気で、アリエッタ様を救おうとしているのか？」
「！？」
「アリエッタ様は戻ってこない…誰がそんなことを決めた！」
アルムのどす黒かった瞳に、僅かな光が戻っている。
「たかだか、言葉による説得のみで…」
嘲るように、含み笑いをしながらアルムは続ける…。
「戻らなければ、滅ぼす。せめて自分たちの力で…。奇跡など信じない」
今の仲間達の行動を代弁してみせるアルム。
「フン…。その努力はしたのか？ 何か行動を起こしたのか？ 命を懸ける程の事をしたとでも言うのか？」
アルムの言葉に、女性剣士の動きが止まる。
「…ま、まさか…アルム…あなたは」
「…私は、アリエッタ様を護る…。貴様達が、いくらかかってきても…例えこの身が滅びても…」
アルムは、オルゴールを拾い、それをしまう。
「…邪魔なら滅ぼす…それでは、魔族と同じではないのか…？ 私ごときを…倒せないようでは…アリエッタ様…は…到底…」
「まって、アルム！」
「…奇跡は…自分の…手…で…」
おぼつかない足取りで、退却するアルム。瞳は再びどす黒く濁っていた…。
後に残される女性剣士。
「…アルム…その為に…敵に？ 私たちは…アリエッタ様を取り戻す行動を、本気でしてたのかしら…。命を懸けてまで、本気で…」
戻らないと決めつけ、具体的な手段を何一つ起こさず、滅ぼそうとしていた。何もしないうちに諦めていた…。
しかし、アルムは違う。彼女は彼女なりに行動を起こした。何かを為そうとしていた。例え、それが敵になることであっても…。何もやろうとしなかった自分に、アルムを責める権利はない。
「…アルム…あなたは、何をやろうとしているの？」
女性剣士のつぶやきが、闇の中に消える…。
そして、再び場面は静寂の中のアルム。
「…く…次が…勝負の…刻…」
ギリギリの戦い。狭間の戦い。限界の戦い。長くは持ちそうもない。最後の勝負の刻が迫っている。アリエッタを取り戻すために…。
頼みの綱は…唯一のアルムの理解者…そう、彼はアルムの…。
＜終わり＞
【管理人紹介】
ＭＲＺ様より頂いたアスターの銀嵐槍兵アルム・ナートさんのプラリア双刃列伝第４話です！
闇に堕ちてまで旗頭アリエッタを救おうとするアルムさんの心中がよく分かるお話です。
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