エタムン・プラリア 作者：ＭＲＺさん、Ｋさん 掲載日：２０００．７．１５
アルム・ナート／第７回アクション別紙プラリア
双刃列伝！！
第５話：「悲しみの中の光！ 兄との再会！！」編
written by. Ｋ ＆ ＭＲＺ
■第１刃：「動き出す刻！ 運命の兄妹…！！」
…少年の目の前で、ヴィヴィ＝アリエッタは塵と化していった。
その場のルーンマスター達は涙を流し、仕方がなかったとはいえ自分たちの行った事への重圧を感じていた。
「こんなの、こんなのって無いよっ！！ …ボクは…また、また護れなかった…」
その少年、パアム・エルクリッドは呟いた。彼もまた涙を流している。
「すまない…いや、それで済むことではないが…」
「我々はこの重みを背負って生きていく…そして、この悲劇を繰り返さないために…」
ルーンマスター達が彼に声をかける。
…しかし、彼らの言葉はパアムには届いていなかった。
「やっぱり…ダメ…なんだ…。人間だって…魔族とおんなじなんだ…
どうせ、分かり合えないんだったら…
助け合えないんだったら…
だったら、一人でいいじゃないか…
そして…ミンナ殺し合って、全部無くなっちゃえばいいんだ…」
彼は自分の心に閉じこもり呟いた。
心にあの声が蘇る。…そう、あのときの魔人の声
『本当の魔人になれば…誰もお前を愛さないし、誰もお前のために死にはしない…』
『…お前の心の闇は閉じこめられているだけだ。時間が進めば同じ事…』
またパアムの『負の感情』が高まっていく！ １２年前のあの日のように！！
そして…。
「無くなっちゃえばいいんだぁぁぁっ！！」
ズゴオォォ！！
「！！」
ただならぬ『闇』の気配を感じて、ルーンマスター達に緊張が走る。
そして彼らは見た。パアムの銀髪が漆黒に染まってゆくのを！ 体が大きくなってゆくのを！ …いや、成長しているのか？！
「おまえも！ おまえも魔人っ？！」
ルーンマスター達が剣に手をかけた…が！
…〜♪〜♪♪〜〜♪〜〜…
その時、またあのメロディーが流れた。…あの妹の叫び。
疼き、闇の波動に震えていた彼の動きが止まる！
…そしてまた、時は戻っていった。
次の瞬間、パアムは元の銀髪をなびかせていた。
「ゴメン、フラウ…そしてアリエッタサン…ボクはまた自分を失うところだった」
「…君は？ …君は一体！？」
「…ボクは人間だよ、ミンナと同じ。人間がみんな持ってる『闇』も持ってるけど。
でも…またボクの妹、フラウが護ってくれたんだ」
そう言ってパアムは懐のオルゴールを取り出す。
…しかし。
「！？」
…そう、メロディーを奏でていたのは彼のオルゴールではなかったのだ！
パアムは、はっとして辺りを見回す。
「！ ヴィヴィ配下の魔剣士？ …あの時の？」
そのメロディーは、気を失っている『双刃の魔剣士』アルム・ナートの懐から
発せられていたのだ！
…〜♪〜♪♪〜〜♪〜〜…
「…ま、まさか…そんな…そうなの？…」
驚愕するパアム。脳裏にアルムと出会ったときの場面が浮かぶ…。あの紅い月の下、微かに聞こえたメロディー…。
「やっぱり…やっぱり聞き間違いじゃ…なかったんだ！
じゃあ、じゃあ…！」
彼の胸が高鳴る。身体が震える…。
アルムを見つめるパアム。
流れるような黒髪…。母と同じ黒髪…。
その顔にも、かすかに面影が残っている…。
「…そっか…」
頬を涙が流れた。さっきまでとは、また違う涙。
「…そうだったんだ…」
パアムの悲しい表情には少しの安らぎが生まれていた…。
そして彼は、アルムの方に歩み寄っていった。…妹の名をつぶやいて。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
■第２刃：「深き闇の中で…！ 魂の叫び！！」
「く…！ ア、アリエッタ様…を…」
少女は、地面に倒れながらも、アリエッタの元へと向かおうとする。
しかし、首筋に受けた一撃は完全に彼女の自由を奪い、動くことも出来ない。
出来ることと言えば、アリエッタの方に目を向けるだけであった。
「…わ、私は…護らなければ…アリエッタ様を…」
薄れてゆく意識…。アリエッタがルーンマスター達と闘う姿が見える。
そして…。
「！！！」
アリエッタ・ウンドデイルの身体を依代としていたヴィヴィ・ザ・セブンズライフは…彼女の目の前で…討たれた…。
「ア…、アリ…エッ…」
遠くなる意識の中、少女…双刃の魔剣士アルム・ナートの目には、霧散するアリエッタの姿が焼き付く。そして、アルムは、完全に意識を失うのであった…。
闇…。底知れぬ闇の中に、アルムは浮かんでいた…。
「…私は…死んだ…のか？」
闇の中で呟くアルム。その呟きは声にもならず、闇に消える…。
闇の中に、先程の光景…。アリエッタの霧散するシーンが浮かび上がる。
「…護れなかった…私は…全てを…」
呟くアルム。
「…何が、双刃の魔剣士だ。…何が『アリエッタ様を護る』だ…」
涙が溢れる。それは闇の中に溶けるように消えていく…。
「…何も、できはしない…。人一人、護れもしない…。
私の…私の大切な人を、救うことも…！」
自分で自分を抱くアルム。両腕には、もう何も無い…。
「…私は…、私は…あまりにも……無力だ…」
そのまま、闇の中を落ちていくアルム…。
そんなアルムを無視するかのように、闇には次のシーンが浮かび上がる。
「…今度は、何だ？」
紅い月の下、出会った少年…エメラルドグリーンの瞳…。
「…この少年…そういえば…アリエッタ様を…護ろうとしていた…な」
アリエッタが霧散する前、止めに入っていた少年と、あの時の少年が同じ人物だと気づく…。
そして、再びシーンが変わっていく…。
「…フン…走馬燈…と言う奴か…」
次々と浮かんでは消える記憶の数々…。アリエッタが健在だった頃…、アルムが入団した頃…、一人で闘っていた頃…。
そして、育ての傭兵のもとを旅立った頃…。
「…ガルム…私は…駄目だったようだ…」
最早、涙も出尽くしたアルムは呟く…。
傭兵の名は、ガルム・ナート。アルムを拾い、育てた第二の親とも言うべき人物…。
そして、そのシーンも消え…さらに過去へ…。
「…！ 嫌だ…」
そこに来て、闇を漂っていただけのアルムが、急に足掻き始める…。
ガルムから剣を教わっていた頃…、ガルムに拾われた頃…。
記憶は、過去へと遡る…。
「イヤだ！ イヤだ！ ここから先は…見たくない！」
この先は…。そう、アルムが兄と引き裂かれた時である。
ガルムのシーンが消えた…。
そして、次…。
「嫌だ！ 嫌だ！！」
シーンがぶれる…！ 記憶の錯乱！
しかし、走馬燈は止まらない…！
兄が目の前に立つ。幼き少女は血まみれの父親に覆い被さるように泣いている。
「…父さん…。やはり、このシーンか…」
足掻いていたアルムだったが、それも無駄と知り、覚悟を決める…。
兄の姿が浮かぶ。魔人に挑む兄…。
しかし、この姿に、どこか見覚えがある。
「！？ 兄…さん？」
確かに兄だ…。これほど鮮明に思い出すことは無かった…。姿、声、髪の色…。
「…まさか…」
そして、振り向く兄の顔…！
しかし、それを確認する前に、闇に声が響く…。
「？ 兄さん？」
そう、兄の声だ。今のシーンにでていた兄の声が、全く別の感じで聞こえる。
そして、シーンは再び霧散するアリエッタの場面へ…。
「アリエッタ…様…」
再び、無力感に襲われるアルム…。
「やっぱり…ダメ…なんだ…。人間だって…魔族とおんなじなんだ…
どうせ、分かり合えないんだったら…
助け合えないんだったら…
だったら、一人でいいじゃないか…
そして…ミンナ殺し合って、全部無くなっちゃえばいいんだ…」
闇に響く声…。兄の声…。
「…そうだ…それがいい…所詮、人間も魔族と同じ…」
兄の声に同調するように、アルムも呟く…。
段々と周囲の闇が、より深く…より重くなる…。
「無くなっちゃえばいいんだぁぁぁっ！！」
闇に響く叫び…。魂の叫び…。
「分かる…兄さんの叫び…悲しみが…。これは…私自身の、叫び…私の闇の叫び…」
深く闇に染まりつつあるアルムの意識…。
しかし…。
…〜♪〜♪♪〜〜♪〜〜…
「！！」
オルゴールの音色…。
その音色は、アルムの心に深く響き渡り、闇を晴らしてゆく…。
「…闇が…消えてゆく…」
正と負の狭間で、自分をつなぎ止める音色…。兄の形見…。
「…兄さん…」
アリエッタの霧散するシーンが繰り返される…
「……私は……どうすれば…いい……」
呟きは静かに闇に消える。その問いに応えられる者は誰もいない。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
■第３刃：「兄妹の絆！ オルゴ−ルの音色！！」
「フラウ…」
…そう呟きながら少年は気を失っているアルムの側に歩み寄ろうとする…。
しかし、それより早く、アルムの身体が動く。意識を取り戻したのだ！
「…く！ 私は…」
オルゴールの音色で意識を取り戻すアルム。
ぼやける意識の中、何とか立ち上がる…
「おい！ ヴィヴィの仲間が目を覚ましたぞ！！」
ルーンマスター達の声…。
「…アリエッタ…様は…」
視界がぼやける。朧気な記憶の中、アリエッタが霧散するシーンを思い出すアルム！
「！！ 貴様達…アリエッタ様を…」
頭を押さえながら、周囲を見るアルム。その問いにルーンマスター達は答えなかった。
…いや、答えられなかった。苦渋の表情を浮かべ、俯く者もいる。
「！ …そうか…貴様達は…アリエッタ様を救う努力もせずに…
斬ったのか…！」
まだ鳴っているオルゴール…。それを首に下げながら呟き、剣を抜くアルム…。
「！！」
ルーンマスター達の間に緊張が走った。経験が体を動かし剣を構え直させる。
「ミンナやめてよっ…もう…」
「危ない！ 下がってろっ！」
「まだやる気っ！！」
あの少年がまた叫んでいた。
しかしその声はうずもれ、誰にも届かない…アルムにも。
「…そして、私も斬る…か。邪魔になったから、斬る…」
呟きながらアルムも剣を構える。すでに闘う力など無い…。それでも構える。
ルーンマスター達の剣先もアルムに向いた。
…そして。
「フン…貴様達も魔族と…
同じだっっ！！！」
ドウッ！
アルムは単身ルーンマスター達に突っ込む！
アリエッタ亡き今、彼女もまた、ここで果てるつもりであった。
…しかし！
「もうやめてよぉっっ！！」
ズゴオォォッ！！
叫びと共にそれを遮る一陣の旋風！ 吹き荒れる風の結界がアルムの動きを止める！
「！！ こ、これは…！」
「ダメだ…それじゃダメだよ！ 死んじゃ、ダメだ！！ アリエッタサンの為にも！」
旋風は、あの少年…パアムの手から放たれていた。
「！！ 貴様…よくもそんなことが言えるっ…！ 貴様等で…殺しておいて…！」
霞む視界の中、パアムの声に聞き覚えのあるアルム。しかし、今はそれを考えてる暇はない！
アルムは、剣を構え旋風の中を突き進む！
「…ボクだって、ボクだって辛いよっ！ 後悔してるよっ！ ボクは彼女を救えたんじゃないか？ 他にやりようがあったんじゃないか？
…ボクはあの時ミンナを止めることができたんじゃないかってっ！！」
アルムの突進を止めようと、風が勢いを増す！
「（なんだ…この感じは…！？）」
少年の叫び…。その声、意志の強さ…。そして、自分への違和感…。
「！ 貴様…あの時の…！」
朧気に見える少年の姿を思い出すアルム。そう、あの紅い月の下で会った少年…。他のルーンマスター達を止めようとしていた少年…。
そして、どことなく懐かしいような感じを受ける少年。
「…これ以上、弁解はしないよ。…でも、もう終わっちゃった事なんだ。終わった事は変えられないよっ！！」
「そうだ！ 変えられない！ アリエッタ様は死んだ！
私はまた、護りきれなかったんだっ！！」
アルムが一歩前へ出る！
「ボクだって…！ また、また護れなかったって思ったよ！！」
パアムが押し返す！
拮抗状態…。それぞれの心のぶつけ合い！ そして…、二人は叫ぶ！
「兄さんの時みたいにっっ！！」
「フラウッ！ キミの時みたいにっ！！」
パキィインッ…！
風が勢いを増し、乾いた金属音が鳴り響く…。それと同時に収まる旋風…。
「…フ…ラウ…？」
アルムが呆然と立ちつくす…。
構えた剣は、二本とも真ん中から折れていた。パアムの旋風がアルムの双刃を越えたのだ…。地面に突き刺さる、二本の剣先…。
しかし、それ以上の衝撃がアルムを揺さぶる！
「く！！ 頭が…！ フラウ…その名前は…」
遙か昔に聞いたことがあるような響き…。記憶が先程の走馬燈と同じように現れては消える！
「！ そうだ…フラウ…私の名前…私の、本当の名前…」
さっきの戦いで力の残っていないアルム。
朦朧とする意識の中で、記憶のつじつまが合ってくる。そう、「フラウ」はアルムの本当の名前！ 兄が健在だった頃の名前…。
「…しかし、それを知ってるのは…」
「…そう、そうなんだよフラウ。ボクなんだよ、
ボクは、パアムなんだよ…！」
「！！」
パアム…そう、兄の名前…！
まさか…兄は、兄はあの時…。
しかも、３０に近いはず…。こんなに、若いはずは…。
しかし、この声…この瞳は…！
声にならないアルム。薄れていく意識の中で様々な疑問が浮かんでは消える…。
「フラウ…」
パアムは話を続ける。懐のオルゴールを取り出しながら…。
アルムと同じオルゴール…。兄の形見のオルゴール…。
それと同じ物が同じメロディを奏でる…。
「！！ それ…は…」
アルムのオルゴールも鳴り続ける…。
…〜♪〜♪♪〜〜♪〜〜…♪〜
…〜♪〜♪♪〜〜♪〜〜…♪〜
そのハーモニーはアリエッタの冥福を祈るように、そして兄妹を慰めるかのように、夜空に染み込んでいった…。
「…パアム兄さん…」
最後にそう呟くと、アルムはオルゴールの音色に導かれ、深い眠りにつくのだった…。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
■第４刃：「悲しみを越えて…！ １２年目の再会！！」
再び夢の中のアルム。しかし、今度は周囲は闇ではなく、優しい光に包まれている。
『やっと、自分を取り戻せたようだな…アルム』
「！！ ガルム…」
空間に浮かぶ一人の男。長い黒髪を肩口で雑にくくってある。鋭い目つきに、ワイルドな雰囲気…。年は、３０代前半くらいか？
アルムの育ての親（と言うほどの年でもないが）。傭兵のガルム・ナート。
『これで、俺も一安心だ…。俺の剣の役目も、これで終わりだ』
微笑むガルムの左右に、二本の剣が浮かぶ。それは二本とも、真ん中から折れていた…。
「！！ …そうか…剣は…。すまないガルム…」
『フン…気にするな…。こうならなければ、ならないんだ…お前が本当の意味で、巣立つためにはな…』
嬉しそうに言うガルム。
『…正直言って、俺はお前に剣を教えた事を後悔していた…。女の身で戦いの場に出すのもそうだが…。まだ、未熟な貴様の心が、この世界に耐えられるか…。あえて、血なまぐさい道を進まずとも、もっと、普通の生活が…本当の自分を表現できる生活が、出来たんじゃないかってな…』
「……」
『しかし、お前は、この道を進み…さらに本当の自分も取り戻した…。俺の剣は此処までだ…』
ガルムの姿が薄れていく…。
「ガルム！」
『…これからは、自分の道を進め…。自分の剣を持て…。だが、忘れるなよ…誰のために剣を振るうのか…。何の為に闘うのか…』
もはや、声だけのガルムに、アルムは聞き返す。
「出来るのか！？ この私に？ 自分の剣を持つことが！？」
『フン…そんな事俺が知るか…』
「な…」
いい加減な回答…。
『…だが、貴様はもう持ってるんじゃないのか？ 自分の剣を…。
兄さんを大事にしろよ…』
そのまま、アルムの意識は光の中に消える…。
どれくらいの時が過ぎたのか、それともほんの一瞬のことなのか？ アルムの意識はベッドの上で覚醒する…。
「！？ 兄さんっ！」
気がついたアルムはベッドから跳ね起きた。
「っつ！！」
しかし、体中に激痛が走り、再びベッドに倒れ込む。
「？ ここは…」
気づくとベッドの上。怪我の手当もされている…。
「…夢…だったのか？」
天井を見つめ、呟くアルム…。
「…そうだな…兄が…、兄さんがいるはずは…」
ガチャッ！
「あ！ 気がついた！？ フラウ！」
その時、扉が開いた。同時に聞こえる声。
「え？」
「あっと！ 自分で動いちゃダメだよ！ 傷口が広がるからっ！」
あわてて近寄ってくる少年…パアム。
「ただでさえ、すごい怪我なんだから…。ホントこの傷で良く動けたよ…。
ほら、あったかいミルク持ってきたよっ！ 飲む？」
アルムが呆然とする…。
彼は少し顔を傾け、じっとアルムの顔を見つめた。
「どしたの？ …飲まない？」
「あ、ああ…すまない。いただこう」
見つめられて照れたのか、アルムは目をそらして返事をする。
「よかった。ちょっと待ってて、いま入れるよ。
…動こうとしちゃダメだよ。起きるの手伝うから。」
彼はアルムの答えにニコッと笑って振り返り、カップにミルクを注ぎ始めた。
いい香り…。なんだかなつかしい気持ちになる。
そう言えば、昔よく飲んだ山羊乳はこんな香りだっけ…。
アルムはその背中を見つめながら、いつの間にか微笑んでいた。
「ほら、入ったよ。…力入れちゃダメだよ。傷むからね。ボクに重さをかけていいから」
「…ありがとう」
アルムはパアムの手を借り、上体を起こそうとした。…が、シーツがはらりと落ちる。
晒される肢体。そう、アルムは服を着ていなかったのだ。
「え？ あ！ きゃ！！」
「あ！ ご、ごめん！ そんなつもりは…」
まるで女の子みたいな悲鳴（実際女だって…）をあげて、シーツを引き寄せるアルム。
「…見た？」
「……」
パアムは真っ赤になって顔を逸らしている。…それが答えのようなものだ。
「見たんでしょう？ …エッチ」
「…ほ、ホントに大きくなって…」
「……なにが？」
アルムが睨む。あわてて首を振るパアム。
「い、いやそうじゃなくって…あの時、まだキミは小さかったから…」
その言葉を取り違えるアルム。ムッとして、反論する。
「昔と一緒にしないでよ！ 今は、結構自信があるんだから…！」
「いや、胸の話じゃなくって…！」
「じゃあ、何の話よ…！」
と、自分の言葉にアルムはハッとなった。
「…私、こんな言葉使ってる！ …なんだか懐かしい」
そして、パアムの瞳を見つめる。
「…ほんとに、兄さん…なの？」
アルムの問いに、パアムもまたアルムの瞳を見つめた。
「信じられない？」
パアムが優しく微笑む。その微笑み、雰囲気は、まさしく兄のもの…。あの時と少しも変わっていない…。
「…ううん。でも、その姿は…」
アルムの疑問。
パアムはそれに答える…。
「…ボクはあの時、魔人になっちゃったんだ。
でも、キミの叫びがボクを人間に引き留めてくれたんだよ。
…そのかわり、ボクの時間も止まっちゃったけど。」
「じゃあ、本当に…兄さん…」
そう言うアルムの瞳には熱いものがこみ上げてくる。
１２年…。戦い続けた１２年…。その心の支えにしていた兄が…今、目の前に！
「そう、そうだよフラウ。ホントに大きくなっちゃって…ボクよりも」
そう言って微笑むパアム。
アルムは、堰を切った様に彼の胸に顔を埋めた。
「…兄さん！ 兄さんっ！！」
その頭にパアムの手の優しい感触が伝わる。１２年ぶりの感触。
そう、この感じ…。忘れていた、この優しさ…暖かさ…。
「ゴメン、フラウ。辛かっただろう…こんなに、こんなに強くならなくっちゃいけないほど…」
「ううん…もういい。もういいから」
パアムの瞳からも涙がこぼれていた。その涙を受け止めるようにアルムは答えた。
「でも、もう一緒だよ。もうキミを失いたくない」
「うん…」
「これからは２人で魔族に立ち向かおう。
父さんや母さん、そしてアリエッタサンのために。
…そして人類の希望を失わないために」
…〜♪〜♪♪〜〜♪〜〜…♪〜
…〜♪〜♪♪〜〜♪〜〜…♪〜
また２人のオルゴールが鳴っていた。旋律がその再会を喜ぶかのように重なり合い、
そのメロディーはハーモニーになった。まるで２人の絆を表すかのように…。
こうして兄妹は再会を果たした。
…それは、今回の悲劇の中での唯一の光だった。
＜終わり＞
【管理人紹介】
ＭＲＺ様より頂いたアスターの銀嵐槍兵アルム・ナートさんのプラリア双刃列伝第３話です！
旗頭アリエッタを救おうとするアルムさんの心中がよく分かるお話です。
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