〜Legend of Alcadir〜
白光の翼 〜微笑みの天使…〜
第１話：「天使は舞い降りた…！」編
ｂｙ．アッザムＭＲＺ
第０翼：「プロローグ」
「…ここ…は？」
少年は、見たこともない場所に迷い出て途方に暮れる。
「あれ？ おかしいなぁ…。この道で合ってたはずなんだけど…」
薄汚れた服…。いや、服と言うよりはボロ絹…。それと同じくらい汚れた顔や手。おおよそ周りの高級そうな場所には似合わない…。
少年の名はイルム・ナート（８歳）。スラムに住んでいる、ウイングルの少年である。
何故スラムに住んでいるのかと言えば、話せば長くなるが…、家族は３年ほど前に全員死んでしまったため、行くところが無くなったからである（全然長くない）。
ちなみに、ウイングルと言うことは周りには隠している。理由は…まあ、色々あったわけ。だから、（普段は）翼がないのだ。
「あ…あそこから抜けれそうだ…良かった…」
イルムは、立ち並ぶ城壁のような建物の中に一つだけあいていた門に向かって駆け出す。
少年は気付いていなかったが、そこはテンオレン家の裏口であった…。
かくして、少年はテンオレン家の敷地内に迷い込むこととなった…。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
第１翼：「怪盗！？ 出会いは突然…！！」
「えーと…なんだか…どんどん違う場所へ行ってるような…」
一層迷うイルム。いつの間にか建物の中に入り込んでいる。
「まあ、いいか…。その内帰れるよね」
気楽な…。そのままどんどんすすんでいく。
『おい、貴様…。何者だ！ どこから入った？』
「え？」
案の定声を掛けられるイルム。って、いうか今まで気付かない方が…。
『…なにか言ったか？』
いえ、なにも…。
「あ、ちょうど良かった…！ 僕、道に迷ってしまったみたいで…。ここは、何処ですか？ どうやったら、帰れます？」
暢気に質問するイルム。しかし、相手は話を聞いていない…。
『怪しい奴だ…。その身なり…スラムの者だな！ 此処を何処だと思っている！』
「え？」
急に、イルムを掴まえようとする使用人！ とっさに、交わしてしまうイルム！
『ぬ！ 反抗するのか！？ さては、盗人か！』
「いや、ちが…」
『ならば、容赦せんぞ！』
パチン！ と、指を鳴らすと、続々と使用人達が集まってくる！
「な…ちょ…話を…」
『かかれ！』
「わーー！ なんでーー？」
襲いかかる、使用人達！ 尚使用人の出で立ちは、黒いスーツにグラサンだ！（おいおい！）
「ひー！ なんで、僕追いかけられてるの〜？」
走るイルムを追う使用人達！ 当のイルムは、何故追われているのか理解していない！
『こらー！ 花壇に入るな〜！』
「ごめんなさぁ〜い！」
逃げてる途中、花壇に踏み込んでしまうイルム！
草花の精霊もご立腹のようだが、こちとら命がかかってる！ そんな物に気を使ってる余裕なんてナッシング！
でも、追いかけてくる使用人達もずかずか踏んでるような…。
「！！ よし、良いアイデアが浮かんだ！」
イルムは、逃げる為の「ナイス」で「イカ酢」（死語連発）方法を、思いついた！ その方法とは！？
「あ！ 鳥が空を飛んでいる！！」
『なに！？』
一斉に空を見上げる使用人達！
「よし！ 今のうちに…！」
しかし！！
『鳥が空飛ぶのは、当たり前だろうがぁぁぁ！！！』
「ああ！ しまったぁぁ！！」
バカ…なのか？
「はぁはぁ…。」
何とか、廊下の陰に隠れて追っ手をやり過ごすイルム。
その彼の背後に迫る人影！
「ねぇねぇ、キミ何してるのぉ？」
「（びくぅ！）うわ！ ビックリした！」
「キミも、かくれんぼ？」
「？ （女の子？）」
見つかったのかと思ったが、そうではないらしい…。まだドキドキいってる心臓を押さえて、落ち着けるイルム。
「（な、なんだ…女の子じゃないか…。驚いて損した…。静まれマイ・ハート…）」
驚くイルムを無視して、イルムの側にしゃがみ込んで、こちらをのぞき込む女の子。歳は、５歳くらいか？ 好奇心旺盛な目でこちらを見つめている。
「ねね、キミ誰？ 泥棒さん？」
「…あ、いや…」
「やっぱり泥棒さんなんだ！？ えーとぉ確か、怪盗って言うんだよねぇ！」
「いや、僕は…」
「で、何を盗むの！？ ねぇねぇ！」
やっぱり、こっちの意見は無視ですかい（笑）。
ちなみに、この女の子は「テンオレン家」の三女、「ガルゼリッタ・テンオレン」さん。でも、文中では女の子と表記されています（爆）。
「そっか！ 怪盗さんかぁ…かくれんぼより面白そー！ ボクも入れて〜！」
「…いや、遊んでる訳じゃ…」
二人の出会いは、こうして始まったのです！ いいのか？ こんな出会いで？？
ま、いーか。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
第２翼：「怪盗は、高いところがスキ！？」
女の子との出会いで、少し落ち着くイルム。
しかし！ ゆっくりしている暇はない！
『こっちで、声がしたぞ！』『こっちだ！』
追っ手の声。
「！ 逃げなきゃ…」
イルムが、追っ手の声に無意識に反応して逃げようとする。それをみて、女の子も立ち上がる。
「そっか！ 見つかって、追われてるんだね！」
「…まあ、そんな所かな？…」
イルムは、話がややこしくなるので話を合わせることにした。
「ところで、キミは此処の人？」
「そうだよぉ」
「（やった！）だったら、話は速いね！ どこか逃げる場所、あるかな？」
「任して！ 良いところがあるよぉ！」
言うが早いか、女の子はイルムの手を引いて駆け出す！
「わ…ちょ…まって！」
「早く早く〜！」
「こっちだよ〜」
どんどん先に行く女の子。イルムも後を追って階段を駆け上がる！
ん？ 上がる？？
「…なんで、上に…？」
イルムは嫌な予感がしてきた…。
「ここ〜！」
ばん！ と、扉を開けたその先は…屋上！！
「…やっぱり…」
「大丈夫！ ここなら、絶対見つからないよぉ！」
僕が高所恐怖症と、知っててこの場所に！？ いや、単なる偶然…女の子の行為を疑うなんて、僕はどうかしているよ…。でも、でも…屋上って、逃げ場無いんじゃ？ 余計に追いつめられたような…。まさか…この女の子も、仲間なの？ あ、いや…駄目だ駄目だ！ 信じなきゃ…。
一人葛藤するイルム。目の前の女の子は、無邪気に笑ってる…。
そ、そうだ！ あんな女の子を疑うだなんて…。バカバカバカ、僕のバカ！ そうだよ、信じる心を忘れちゃいけないんだ…。そうだよね、母さん…。
「ねぇねぇ、脱出用の気球とか何処にあるのぉ！？ あ、ひょっとして、仲間が迎えに来るんだ！ それとも、何か他に…」
「……」
目をきらきらさせながら、聞いてくる女の子。すっごく期待に満ちた目で見られるイルム。
「…（駄目かも）」
密かに、イルムはそう感じた…。
イルムが、何もしないのを見て女の子は、勝手に解釈を進める！
「そっか！ まだ、脱出には時間があるんだね！ じゃあ、その間良いもの見せてあげる〜」
そう言うと、女の子は屋上の端に走っていく。
「ねぇ！ こっち、来てみなよぅ！」
「？」
女の子に呼ばれて、屋上の端まで行くイルム。
「！」
展望台からの眺めのような、壮大な景色が広がっている。どうやら、この屋上はかなり高いところにあるらしい…。
「ほら！ いい景色だよ…。ボクね、ここから見る景色がスキなんだぁ…。でも、『此処は危ないから』って、言われて…なかなかこれないんだよ〜」
「……」
しかし、嬉しそうな女の子に反して、イルムの表情は硬い！
「？ どうしたの…？」
「…あ…いや…」
固まるイルム。確かに風景はすばらしい…。しかし、イルムにとってはもっと重要な問題があった…。
「…た…高い…」
「高い？ え？ キミ、ひょっとして…高いところダメなのぉ？」
女の子の質問に、ただ頷くイルム。
「あっはは…。高所恐怖症の怪盗なんだぁ！ 面白〜い。じゃあ、どうやって脱出するの！？」
まだ、女の子はイルムがどうやって脱出するのかを期待している…。
「いや…脱出って…僕の方が…」
聞きたいよ…と、いう台詞を言う前に、女の子は次の行動にでる。どうやら、余り人の話は聞かないらしい（笑）。
「ボクは全然ヘイキだよぉ！ 高くても！」
固まったイルムを後目に、柵もない屋上の端を歩く女の子。
「！ 危ないよ」
「ヘーキ、ヘーキ」
止めるイルムを無視して、歩く女の子。
で、お約束の展開！ はい、そうですね！ 落ちました。女の子。
「え？ あ、ボク、落ちちゃったぁぁぁ……！！！」
落ちながらも、なにか嬉しそうなのはどういうことなのだろう（笑）？
さあ、どうする！ イルム！ 此処で見捨てるのか！？ それとも！？
続きは、次の章で！
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
第３翼：「白き翼の羽ばたくとき！！」
「…！」
ずばぁ！！
をを！ 迷わず、ダイビング！！ さすがだ！ 男だ！ 格好いいぞ、イルム！
「…やっぱり、怖いいい！！ やめとけば良かったぁぁぁ！！」
泣きながらダイビングするイルム！ 情けない…。見直して損した…。
「あ〜怪盗さん、脱出するんだね〜。どうやって、逃げるのぉ？」
「そんなこと言ってる場合じゃないぃぃ！！！」
空中で暢気に叫んでくる、女の子！ おいおい、そこまでノンビリにしなくても…。これじゃあ、どっちがイルムかわかんないぞ！
「（く！ どうして、僕は…こんな怖い思いをしてまで…）」
景色が流れる！ 地面が近づく！ かつての体験が蘇り、身体が動かない！
「動け、動け、動け！ 動くんだ！ 頼むから、動いてよ！」
エ○ァ風に叫ぶイルム！
必死で、集中する！ しかし、彼の「最後の手段」は、全く反応を見せない。スラムで隠れることにより、自ら封印し物。
そう簡単に動くはずはない…。
「…手を！ 速く！」
それでもイルムは、女の子に手を伸ばす。
「届かないよ〜…」
しかし、届かない。既に二人の間隔は腕を伸ばすくらいではドウしようもない！
「くそ！ 動いてよ！ 今動かなきゃ、今やらなきゃ、また…」
脳裏をかすめる、ヴィジョン。
「もう…嫌なんだ！ あんな思いは…！ だから…！！」
堅く目をつむって意識を集中する。徐々に、頭に…そして、身体に思い出されてくる…。その、方法が…。
「（そうだ…この感じ…）」
「ぶつかる〜…！！」
いよいよ、地面が迫る！
「…出てこい…」
バサッッッ……！！
「！！」
女の子の視界は、一瞬にして真っ白になる…。遂に、地面に落ちてしまったのか…！？
…暫く、時が過ぎる…。
「…あれ？ 痛くない？ ボク…死んじゃったの？？」
女の子が、不思議に思う。痛くない。それどころか。身体が軽い…。それに、ふわふわ気持ちがいい。
「あ〜、やっぱり死んじゃったんだぁ！ 死ぬと、魂だけになって、ちょうどこんな感じなんだって聞いたことがあるもん…」
死んだというのに、楽しそうな女の子…。
と…
「大丈夫…？ どこか、怪我はない？」
「え？」
急に声がかかる。そして、真っ白な視界が開ける！
ぶわ！！
「！！？」
突然、風が顔に当たる！ 目を開けていられない程の風…。そして、眼下に広がる屋敷…。
「！？ ボクの家だぁ！ って、ボク飛んでる！ 飛んでるよぉ！」
そう、目の前は空。女の子は空中に浮かんでいたのだ！
「わわ！ 暴れないで！ バランスが…」
と、またさっきの声。すぐ側から聞こえる。
「？ あれ？ 怪盗さん？？ 一緒に死んじゃったの？」
そう、声はイルムだった。イルムの姿を確認しようと、後ろを向こうとする女の子…。
「…あ、動いちゃ駄目だよ…！ まだ、慣れてないんだから…」
「？ あれ？」
動けない。よく見ると、自分の身体はイルムの腕により固定されている。後ろから抱きかかえられている状態だ。
「ボク…生きてるの？」
「勿論、生きてるよ…。でも、これ以上動いたら…今度こそ死んじゃうかも…」
フラフラと、空中を彷徨うイルム。その度に、白い羽根が舞い散る。
そうだ！ 勘のいい読者様ならとっくに気付いていると思うが、イルムは、ウイングル。羽を使って空を飛べるのだ！
しかし、幼き日のトラウマからか、高所恐怖症となり、さらに諸処の事情によりスラムに隠れ住んでいるため、空を飛ぶことはほとんど無いのである…。
なので、すぐに飛べなかったし、飛んだ後もバランスが悪いのだ！
「羽根？ 白い羽根…」
女の子は、本で読んで貰った内容を思い出す。
「…天使…？」
暫く舞い散る羽根に見とれる女の子。
そうこうしている内に、徐々に高度が下がってくる…。
「…そうそう、大人しくしていてね…ゆっくり降りるから…」
ふらつきながらも、高度を下げるイルム。なかなか順調だ…。
しかし！
「…怪盗さん、天使だったんだ！ すっごーい！」
突然、女の子が暴れ始める！ 瞳は星が一杯できらきら輝いている！
「あ！ だ、駄目だよ！！」
「天使天使〜！ 羽根〜！！」
「い、痛い！ 痛い痛い！ むしらないで〜！」
羽根をむしり出す女の子！ なんて酷い奴だ！ 翼人虐待だ！ 恩を仇で返すとはこの事だ！
って、ことで…。
「う、うわーー！！」
「落ちるぅ〜」
はい。バランス崩して落ちました。お約束ですね。
え？ ここでまた、次の章！？ 前と同じパターンのような…。ま、いーか…。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
最終翼：「天使の微笑み、羽根の約束…！！」
バランスを崩して、落ちるイルムと女の子！
「く！」
途中まで降りていたとはいえ。この高さでは骨折くらいはしそうである。
イルムは、とっさに女の子の下に回り込む！
「え？」
一瞬、きょとんとする女の子…。
ドシーーーン！！
「！！ っつ！」
激突！ イルムが下になったので、女の子には全然ダメージがない。
「だ、大丈夫！？ 天使さん！」
墜落のショックで、羽根が舞い散る。
「だ、大丈夫…大丈夫…ってて」
平気そうに笑うイルム。しかし、かなり無理をしているのは一目で分かる。
「でも…羽…」
背中の輝くような羽がうっすらと、紅く染まっている。
「ああ、ちょっとスイカの食べ過ぎかな…？ 本当に大丈夫だから…」
「…」
明らかに嘘。いくら何でも、スイカは…。さっきまで騒いでいた女の子も、何か感じることがあったのか大人しくなってしまった。
「…」
「…」
暫く気まずい時間が続く…。先に動いたのはイルムの方だ…。
「あ、ちょうど出口があるみたいだね…。僕は、このまま帰るから…」
「え！？ 帰っちゃうの？ そんな身体じゃ、無理だよ！」
「…大丈夫。もう、直ったから…」
そう言うとイルムは、平気そうに起きあがる。
「え？ うそ〜？？」
「ほら…ね…。じゃあ、僕と会ったことは誰にも言わないでね…」
そして、少しよろけながらも歩き出す…。
「え？ あ、え…と（ああ、行っちゃう！）」
女の子は、去っていくイルムの背中を見送りながら言葉を探す！
「あ…えーと…て、天使さん！！」
「？」
とりあえず呼び止めてみる。振り向くイルム。
「あの…ま、また…また、逢えるよね…！」
「…そうだね」
にっこり微笑むイルム。
女の子の瞳には、天使の微笑みとして焼き付く。
去っていくイルム。その背に、再び叫ぶ！
「あの…あ、ありがとぉーーっ！ 助けてくれて！」
既に遠目になってしまったイルムは、微笑みながら手を振る。
女の子も、手を振って見送る。
そして、見えなくなった…。後には、白い羽根が残るのみ…。
「…天使…さん」
羽根を拾う女の子。しばらく「ぼー」と、している…。が、遠くから女の子を捜す声が聞こえてくる。
「あ！ そうだ！ かくれんぼの途中だったんだぁ！」
急いで、その場を離れる女の子。手には、羽根がしっかりと握られている。
後に残った羽根は、風に舞い、飛び去っていく…。一陣の風が過ぎた後には…もう、何も残っていなかった…。
そして、立ち去ったイルムは！？
「ぐ！ いてて…やっぱり…無理しすぎたかな…」
平気そうにしていたが、やはりダメージがあるらしい。
「あ！ そう言えば女の子の名前…聞いてなかったっけ…」
今頃気付くイルム（おいおい）。
「まぁ、また…逢える…かな？」
そう言うと、今度は迷うことなく立ち去るのであった…。
おわり
☆登場人物
・イルム・ナート（８歳）／ＰＣ／スラム在住
高所恐怖症のウイングル。過去に身内の裏切りにあい、家族は迫害により、死亡している。
行くところが無くて、スラムで暮らしている。
その割に、落ち込むことも余り無く、結構のんびりした性格。一時、ぐれている設定だったが…真相は！？
尚、口調は今とは少し違います。
ガルゼリッタさんに、羽根をむしられる。
・ガルゼリッタ・テンオレン（５歳）／ＰＣ／テンオレン家・三女。愛称「ルゼ」
テンオレン侯爵家の三女。文中では「女の子」と描写されている（爆）。訂正する可能性有り。
口調にかなり苦しんだ。結局、こんな感じになっちゃった…御免なさい。
好奇心旺盛で、人の話は余り聞かないらしい（爆）。
イルムからむしった羽根を持っている。
＠あとがき
なんか…いまいち調子が出なくて、苦労しました。結局、こんな感じになりましたが、修正が入る可能性は大（爆）。
イルムの口調もはっきりしていないのがポイント（笑）。こんなのが出会いでいいのだろうか？ まあ、いいか。
ちなみに、本格的に出会うのは、精霊神殿です。
お互いに、まだ気付いていないとするか、思い出しているかは、まだ決まってません。
では、又！
アッザム神の恩恵があらんことを！！（爆）