８０１年９月帝都の冬は早い、下々の者達はこれからの冬に備えて準備に忙しい季節、貴族区画にあるスヴォルト家邸宅の主人、バルバロスは憂鬱だった。
「ふむ、どうするかのー。」
質素で飾り気の無いロングチェアに腰をかけ、一人考え事をする。その時、
−コン、コン−
ノックの音、ドアの先には老齢の執事が控えている。
「旦那さま、ガルゼリッタ様とシルヴィア様がお見えでございます。」
「親父さん、お久しぶりー。」
元気いっぱいに敬礼のようなポーズを取って入ってくる少女がガルゼリッタ・テンオレン
「お久しぶり、親父殿。」
全長１５０ｃｍの大剣を執事に預けて入ってくる少女はシルヴィア・ローザリオン、共にイリナ・スヴォルドの親友にして、バルバロスの友人でもある。
「おお、よく来たの、あいにくイリナはカイゼルと共に遠掛けに行ってしまっておるよ。」
「まあ、こちらも突然お邪魔したわけですし、親父さん気にしないでよ。」
「そうか、ほれ、そんなところでは寒いだろう？暖炉の側で温まりなさい。」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「そうだな。」
それからは、いつも通り３人で暖炉を囲んで座談会となる、大体はガルゼリッタがしゃべり、シルヴィア、バルバロスが聞き手に回るという状態になる。
バルバロスはいつものように、元気なガルゼリッタがしゃべっている姿を見ながらふと思う。
−百鬼夜行の貴族社会でこれほどに心を許せる人間がいかほどいるか？まったく、イリナの奴は良い友を持ちおってうらやましいかぎりだな。ワシのように貴族社会の闇を見つづけた人間には、この二人が何物にも変えがたい大切な宝物だのう。−
ぼんやりと、２人の会話を聞きながら考えていると、
「････って、親父さんどうしたの？さっきからぼーっとして？」
心配そうに除きこむガルゼリッタに気を使わせないように軽口をたたく
「ん？ああ、すまん、ちょっと考え事をしとってな････ワシも歳なんだろうか？」
そんな軽口たたくバルバロスに、
「まあ、もうそろそろ四十に届くし･･･、十分お歳を召されているな。」
清ましてシルヴィアの容赦のない突っ込み
「ぐはー、まだ四十には届かんわ！。」
傷ついた顔をするバルバロスに
「しかし、我々より先に四十になるのは間違いないぞ？。」
と更なる突込み、
「うう、いたいけな中年をいじめおって･････、しまいにぁぐれるぞ。」
と言いながら、実際にいじけて見せる姿は、中年の悲しき後姿が何とも哀愁漂う。ガルゼリッタもこみ上げてくる笑いを必死になって堪えていたが、哀愁漂うバルバロスの姿を見た瞬間、何かが砕け散ったのを感じた。
「ぷっ、くっくく･･･、あはははははは、」
二人の漫才にお腹を抱えて笑い転げる。
「ぐっ、ぐれるって、親父さん、じょ、冗談きついよー、あっ、あは、あは、あははははははは。」
「うむ、受けてるようじゃな、同志シルヴィアよ。」
「そうですな、だが、この程度で笑い転げるとはまだまだ甘いと思うが、どうかな？同志バルバロス。」
二人は笑い転げるガルゼリッタを冷静に観察している。と
「まさにその通りだな。」とバルバロス、ニヤリと微笑む、
「同感だ。」とシルヴィアもニヤリと微笑む。
さすがにこれ以上漫才に突き合わされると身が持たないと判断し、とりあえず話題をさりげなく変える。
「はふぅ、････でっ親父さん、考え事ってなに？」
まさか、目の前にいる二人の事について考えていたなど言えないバルバロスは、
「ん？ああー、不肖我が娘の事じゃよ」
と言ってごまかす事にする。
「ほう？イリナの事か？」
「うむ。」
「ボクが、相談に乗るよ！！」
好奇心が刺激されたのか、二人も身を乗り出すように話を聞こうとする。
「そうか、実はな･････」
・・・・・・・・・・・・・・・
二人が聞かされた内容はショッキングな内容だった。
「イリナを社交界にデビューさせるぅ！？」
二人の声が見事にハモる。
「そうなんじゃよ、何ぞ良い知恵ないかの？」
実際に困っている彼はここぞとばかりに意見を求めるが、二人の反応は芳しくなかった。
「無理だな。」とにべもなくシルヴィアが言う。
「無理だね。」とガルゼリッタも同意する。
「そこを何とか！！協力してくれぬか？娘を社交界に出せなんだら亡き妻に申し訳が立たんのだ。」
必死に懇願するバルバロスを見て心動かされた二人は、バルバロスの親バカぶりに
「・・・わかったよ、ボク、協力するよ。」
「しょうがない、私も協力するよ親父殿。」
協力を約束する。
「おおー、ありがとう、ありがとう！！」
男泣きをしながら二人の手を取り、感謝を表すバルバロス。しかし、ガルゼリッタもシルヴィアも気づいていなかった・・・・・・。頭を下げたバルバロスが会心の笑みを浮かべていた事を・・・・・。
後に、“嵐使い”ガルゼリッタと“戦場の黒獅子”シルヴィアをしてこの人物だけは敵にまわしたく
ないと、言わしめた謀略の幕開けであった。
社交界 序章完
キャスティング・リスト
“黒衣の伯爵”バルバロス・スヴォルド（当時３５歳）／ＰＣ／Raiden508
“嵐使い”ガルゼリッタ・テンオレン（当時１５歳）／ＰＣ／スカイＭさん
“戦場の黒獅子”シルヴィア・ローザリオン（当時１５歳）／ＰＣ／花鈴さん
ご協力ありがとう〜。