闇の紋章プラリア 作者：Justyさん 掲載日：２００１．６．１６
血を食らいし妖魔使い
……血がたぎる。体が疼く。まだ足りない…血が…
『血を吸う死神』浅香夏樹
俺はいつものように５人ほど殺って、家(っていうかねぐらだな)に戻ろうとしていた。ひさびさに上質の生き血(まぁ若い女ってところだ)を吸えたのだ。愚物どもには感謝せねばなるまい。
「夏樹よ、今日はいつも以上に凄まじい働きぶりだったな。何かあったのか？」
背中に背負っていた大鎌が俺に話し掛けてくる。…ああ、俺の紹介忘れていたな。俺は浅香夏樹そしてこの大鎌…本当は妖魔なんだがな…はガーネット。ま、そういうことだ。俺はガーネットに言葉を返す。
「別に…何もないさ。ただ美味い血が呑めた…それだけだ」
ガーネットは黙り込む。そんな彼の姿を感じ取った俺は思わず苦笑する。
そうして１０分も歩いた頃であろうか。空の向こうが少し明るくなっている…いや、あれは炎…となると…どこかで火事か？
「夏樹よ、今のままでいったのではちとまずいのではないのか？」
ガーネットが言う。俺はしかし、
「いいじゃねぇか。楽しそうなんだしよ」
と言うと、炎の方向に向かって走り出した。
５分も走ったろうか、俺はその火事のあるところまでたどり着いた。多少ギャラリーはいるがわざわざ斬って捨てるほどのものでもない。全てを無視して火事に見入る。
「……ガーネット、気づいたか？」
「ああ、この火…自然のものじゃないな。おそらく中に術者がいたんだろう。だが…周りの様子を見る限りでは術者がまだ中にいるような気もするんだが…」
その言葉を聞いた俺はゆっくりと未だ燃えている家の中に入っていく。「おい、危険だ！」という声も聞こえたがアメジストに残りの処理を任せ、ガーネットと共に屋敷に入っていった。
入ってすぐに気がついた。むせかえるような血の匂い。何かがあったに違いない。あたりを探してみる…がもう大半は燃え尽きてしまっている。あるのは既に死んでいる中年二人ぐらいか…ん？
「夏樹よ…まだ生きてるようだが。あの女は」
それには俺も気づいた。年のころは…高校生ぐらいか…？近づいてみる。反応がない。脈を取ってみると…まだある。少し思案したが、すぐにこの結論に思い至った。
「サファイア、手伝ってくれ。この少女を運び出す。ガーネット、怪しい奴はたたっ斬れ。生かして帰すなよ」
さすがにガーネットが驚いたような表情をだす。無理もない。今までにはなかった行動だからだ。無言のまま命令を実行に移すガーネット。その間に俺はその女を抱き起こす。ふわっと鼻孔をくすぐる香り…綺麗な肌…ん？なんか変な…まぁいい。煙も回ってきたので俺は早々に彼女を連れ出した。アメジストがよほど大暴れしたらしく周りには血が飛び散っていたが、さっさと此処を去るに越したことはない。
とりあえず家まで戻ってきた。未だに気を失ったままのその女を一旦ソファベッドに寝かせてやる。しかし如何とすることもないので、しばらく様子を見ながら過ごすことにする。ガーネットとサファイアにも見張りを手伝ってもらい、彼女が起きるまで待ってみよう。
…脇腹を突付かれて目が覚めた。どうやら少しの間眠ってしまっていたらしい。サファイアが起こしてくれたようだ。
「御主人様、御主人様がお連れになられた女性が目を覚まされたようです」
ソファベッドの方を見ると、どうやら今起きたばかりらしい少女が虚空を見つめている。まだ自分のいる状況が完全に把握しきれてない様だ。どう声を掛けるか少し戸惑ったが、
「やぁ、目は覚めた？」
少女はまだぼぅっとしたまま、
「ここ…どこ？」
と答える。俺は少し苦笑しながらも答える。
「ここは俺の家だ。君の家が火事になって、俺は君を助け出した。両親はもう手後れだったけどな」
俺はできるだけ淡々と、事実だけを述べるような感じで言葉を出す。少女は無表情のまま、俺の言葉をきいているようだ。俺が喋り終えたのを見計らって、少女が尋ねてくる。
「じゃあ、あなたが助けてくれたの？」
「ああ、そういう事になるな。っと。自己紹介がまだだったな。俺は浅香夏樹。君は？」
少女はすこし黙って…やがて口を開いた。
「平塚…圭子」
俺の口許に自然と笑みがこぼれている。俺は立ち上がり、圭子の方に向かって歩いていく。少し脅えたような表情を浮かべた彼女だが、すぐに緊張を解いた。よかった、まぁ嫌われてはないようだ。俺はそのまま彼女の側により、話し掛ける。
「さて、これからどうする？俺には今やることがないし、圭子がやりたいことあったら手伝ってやるよ。何かあるか？」
「そうねぇ…都内の妖魔の封印をときますか。きっと楽しいわよ？」
圭子の言葉を聞いた俺はニヤリと笑いを浮かべる。俺の見込んだ通りの子だ。この子なら俺を飽きさずに楽しませてくれるだろう。そして……
〜〜一週間後〜〜
俺と圭子は都内の封印の所にいた。ここに封印されている妖魔はまだ若い妖魔らしい。だからこそ勢いよく暴れてくれるので楽しいのだと彼女は言っていた。
「いけっ、クリムゾンヒュドラ！！」
圭子の声と同時に炎の鞭が出て敵の魔人に巻き付く。そして不意をつかれたところで…
「インフィニティ・アサッシン！！」
俺の放つ見えない刃が飛ぶ。いいコンビネーション。敵の数は多いが、能力では俺達に叶うべくもない。あっさり真っ二つにされて転がる魔人達。スピードを上げて走りながら
「圭子！封印はどこだよ！？」
「こっち！」
というが早いが封印らしきところまで辿り着いた。やはりというか、１０人以上もの魔人が最終防衛ラインを引いていた。その姿を見てもなお、俺達はスピードを緩めず、さらに加速していく！！警備の魔人が
「なっ！？」
と発した瞬間には首が飛ぶ。こうして１時間もした頃にはあらかた敵を殺し終えていた。
あたりに動いてる影は俺達二人しかいない。
「さて、封印を解きますか。でもどうやってやるんだ？」
と俺。
「こうするのよ！」
と言って圭子は自分の火炎魔法を封印に向かって思いっきり叩き付けた！炸裂する火球。それでも念のために
「こいつもとっときなぁっ！！」
俺が大鎌を放つ。光り輝く光刃が封印を直撃し・・・妖魔を解き放つ！
全てが終わった後、俺は聞いてみた。
「なぁ・・・なんでこういう事をするんだ？」
すると圭子は髪を揺らし、無邪気な笑顔でこう答えた。
「楽しいからよ」
俺は苦笑を浮かべる。・・・なるほどな。こいつは楽しいことになりそうだよ・・・俺はそう感じながらその場を立ち去っていった。
END
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