エタムン・プラリア 作者：ＭＲＺさん 掲載日：２０００．６．２８
パアム・エルクリッド、アルム・ナート／過去プラリア
双刃列伝！！
外伝１：「運命の再会！ 悲しき音色！！」編
written ｂｙ．ＭＲＺ
■第１刃：「紅き月の下で…！」
「…月…か…。紅い月…今の私と同じだな…」
アシハラ郊外。草原を歩くシルエット。
紅い月明かりに、紅く浮かび上がる姿。腰に二刀の剣を差した、女性剣士。
銀嵐槍兵の裏切り者、闇・双刃の魔剣士アルム・ナートである。
「…」
無言で空を見上げるアルム。その姿は、返り血で紅く染まっていた。
「アリエッタ様を…護る…。ただ、それだけだ」
と、草原に人の気配を感じるアルム。
ふたつのシルエット。
地面に座り込んだ少年と、額に角を生やした馬一頭。
「…敵か？」
自分を追ってきた追っ手かも知れない。剣に手をかけるアルム。
しかし…。
「…？ なんだ…何か、不思議な感じだ…」
二つのシルエット。その内の座り込んだ少年を見ていると、何故か心が落ち着いてくる。
あれほど殺気立っていた自分の負の感情が、急激に弱くなっていく…。
「なんなんだ…これは…！？」
今度は、軽い頭痛に襲われるアルム。
「なんだ？ 一体…？ 落ち着くような、苛立つような…この感じは！？」
軽く頭を押さえながら、アルムの足は自然とシルエットに向かっていた…。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
■第２刃：「運命の再会！！」
月が出ている。紅い月。
アシハラの郊外、草原の中にふたつのシルエット。
地面に座り込んだ少年と、額に角を生やした馬一頭。
…その間には縮まらない隙間。
パアム・エルクリッドと、彼の相談相手のユニコーン…。
パアムはぼやく。
「もう何ヶ月一緒にいるんだよ〜。近くに来てくれったっていいでしょ〜。
ちょっと聞いてほしいことがあるんだよ〜。ねぇ、ダメ？」
ユニコーンは何も答えない。ただじっと彼の目を見つめるだけ。
…しかし、その瞳は語っている。
−おまえも、もう何年その姿のままなのだ…−
「…わかってるよ。ボクの時間が止まってるのは。…フラウの死んだあの日から」
パアムは暗い顔で俯く。しかし、すぐに顔を上げて呟いた。
「でも、もう動かしてもいいかなって思ったんだ…」
そう言って立ち上がり、ユニコーンに背中を向けて２・３歩。
そこでユニコーンに向き直り、珍しく決意に満ちた表情で言った。
「ボクはアリエッタサンを助ける。もう、あの思いはゼッタイにしたくないから」
そして寂しく微笑んだ。
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影に近づくにつれ、アルムの苛立ちは募っていく。
「（なんだ？ 誰なんだ！？ 私は何をしている！？）」
すでに、相手の間合いにまで踏み込んでいる。しかし、何故か危険は感じられなかった。
その時、少年の声が聞こえる…。
「ボ…アリエッタ…ンを……る。もう、……ゼッタイにし…くないから」
「（アリエッタ様！？ 奴は、敵か！）」
途切れ途切れにしか聞こえなかったが、アリエッタという言葉は聞き取れた。
その言葉に弾かれて、無意識のうちにシルエットに突っ込むアルム…。
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「！？」
ズゴオオォォッッ！！
その時、今までの静寂を破って、一条の煌めきと共に風が吹いた。
…いや、それは風と言うにはあまりにも凄まじい。そう、例えるなら白銀の嵐が吹き荒れたかのようだ。
一人と一頭は瞬時に反応したがパアムは剣を抜くまもなくはじき飛ばされ、地面に転がった。
「！ っつ。一体何…！？」
パアムはそういってよろよろと立ち上がる。
しかし、誰かが前に立っているのに気付き、動きが止まる。…いや正確には前の人物が、誰か判って硬直したのだ。
−アルム・ナート。仲間から聞いていた『銀嵐槍兵』の裏切り者。
「…フン…浅かったか…。だが…次は、本気だ…」
パアムははっとして剣を構え、相手を見据えた。
…が、そこであることに気付く。
「？…へんだな、ボクってこんなにすぐ敵に近づかれたっけ？」
そしてユニコーンに視線を送る。やはり彼もアルムを敵と見なしていない。…殺気がないのだ！
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「！？」
ズゴオオォォッッ！！
双刃を抜き、一気に斬り込むアルム！ 今までの苛立ちを吹き飛ばすかのように風を斬る！
「（…く、駄目だ…）」
何故か、本気になれないアルム。剣撃は周囲の草や地面に集中する。
一人と一頭は瞬時に反応したが、少年は剣を抜くまもなくはじき飛ばされ、地面に転がった。
「！ っつ。一体何…！？」
少年はそういってよろよろと立ち上がる。が、すぐに動きが止まった。…いや正確には前の人物が、誰か判って硬直したのだ。
「（…この感じは…なにか…）」
アルムは、少年の前に立つ。しかし、彼女も同じくそれ以上は動けなかった…。
「…フン…浅かったか…。だが…次は、本気だ…」
相手に自分の動揺を悟られまいと、言葉を口にするアルム。
その言葉に、少年ははっとして剣を構え、アルムを見据えた。
瞳と瞳が交錯する。少年のエメラルドグリーンの瞳…。確固たる意志を秘めた瞳。
これと同じ瞳を、アルムは昔見たような気がする。
「（！ 私は…この瞳を…知っている…？ この…この感じは…！）」
胸が高鳴る。急激に様々な感情が呼び起こされる感じを受けるアルム。
と、少年がアルムに叫ぶ。
「…キミもアリエッタサンを人間に戻したいんじゃないの？ 答えてよっ！」
「（！ アリエッタ…様！？）」
少年の言葉に突然アムルは頭を抱えてうずくまった。少年への感情と、アリエッタへの感情がアルムの中で溢れ、暴走を始める！
「…く！ あ、頭が…わからない。私は…アリエッタ様を…！」
「キミもショックだったんだね…。それで自分が判らなくなったんだ…」
少年はそう言ってアルムの背中に手を伸ばそうとした。
が、その手は弾かれる！
「寄るなっ！ （この少年は、危険だ！ 私が、私でなくなる！）」
アムルはそう言い放って立ち上がる。
「…私はアリエッタ様を護るっ！ …護るんだっ！！」」
自分に言い聞かせるように叫ぶアルム！ そのまま闇の中に走り去っていく。
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「あ、待ってよ！」
パアムの声も、届かない。
しかし、アルムの去り際…確かに…あのメロディが聞こえたような気がした…。あの、オルゴールの音色が…。
「…まさか…ね」
…彼女の背中には、残酷なまでの闇はもう感じられなかった。
−あの少女…−
「ボクも感じた。曇った瞳の奥に、まだ光があるのを」
パアムは近寄ってきたユニコーンに答え、そして紅い月を見上げた。
「（何だろう…このカンジ…それに、あの音色…）」
パアムは自分の胸元から、ペンダントを取り出すとそれをあける。
悲しげな音色が響き渡る。そう、アルムの持つオルゴールと同じ音色…。そして、同じペンダント…。
「…確かに、聞こえたんだ…」
そして、アルム。頭を押さえ、闇の中を駆ける…。
「く！ 一体…何が…」
記憶が錯乱している。何故だか急に昔のことが次々と浮かんでは消える。
「…知らない…こんなのは…私は、知らない…」
知らない自分。知らない記憶。断片的に思い出す。
「…くそ！ 今は…こんな場合では…アリエッタ様を…！」
何時しか、アルムのオルゴールも悲しげな音色を発していた…。
二つの音色が闇に響き、そして消えていく…。
…そうして、お互いに気付かぬまま、兄妹の運命の輪は回り始めた。
＜おわり＞
『作品解説 by Ｋ』
この作品は私が書いたものを、アルムＰＬのＭＲＺさんがアルムさんのパートを書き足し、さらに全体の修正してくれたものです。元々つたない文章だったものがＭＲＺさんの修正のおかげで大変読みやすくなりました。（感謝）
ですから、このプラリアはＭＲＺさんの様式で、「双刃列伝！！」というのは彼がアルムさんのプラリアを書くときに用いるシリーズ名（…のような物…かな？）です。アルムさんは二刀流なので、こういう題なのです。
それで、この場面なのですが、第５回リアの後でパアムはアリエッタを見付けられずにアルフォンソの森からアシハラに帰ってきたとき、アルムさんはアリエッタを元の戻すために敢えてヴィヴィの元に下り、アシハラのアマクニ工房を襲った後の場面で、お互いが死んだと思っている兄（妹）だということに気付かないまま出会っています。
パアムと共にいるユニコーンですが、元々アルフォンソの森に住んでいたのですが、アリエッタを元に戻す為に彼が協力を求め、付いて来ているものです。パアムは男ですから、もちろんうちとけてはいませんし、名前も付けさせてくれません。（後にアルムさんが「イルム」と命名しています。）
二人が持っているオルゴールは、幼い頃から二人とも持っていたもので、今は兄（妹）の形見として持っています。…いわゆる兄妹の証というヤツですね。…ベタベタですけど、こういうの好きなんです（汗）
以上、本文だけでは解りにくいので解説してみました！
【管理人紹介】
Ｋ様より頂いたアスター在住のパアム・エルクリッドさんとアルム・ナートさんのプラリア第一弾です！
最後にはＫさんによる作品説明も付いてます。
実はある関わりを持つ二人の物語の一つです。うーん色々と秘密があって先が楽しみになるお話ですよ。
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